草の根技術協力が結実! ペルーのスーパーフードから生まれたサッポロビール「インカの扉」の秘密
冷蔵庫のないアマゾンで、日本の保存食の知恵を活用
「昔からの知人である大橋さんが、2011年出版の自著『冷蔵庫いらずのレシピ』を見て、お声がけしてくれたんです。冷蔵庫が一般的ではないアマゾンで、日本の保存食の知恵を活用したいとのことでした。どんな成果が出せるかは未知数でしたが、挑戦してみたいと思いました」。按田さんはそう振り返ります。
按田さんは、年1回のペースでペルーに渡り、3週間から1ヵ月ほど滞在すること6回。どのような気候でどのような果物や植物が育つのかを知るため、乾季の始まりや雨季真っ只中など、さまざまな季節に訪れました。現地では、鶏1羽を1週間食べ繋ぐための保存方法を考えたり、農家の方々とサチャインチを使った料理コンテストを開催したり。気候風土に寄り添ったサチャインチの加工方法や、現地で調達できる食材と組み合わせたレシピの提案など、現地のプロジェクトメンバーと模索する日々でした。
「草の根技術協力事業での活動は、現地の若い農業技師たちの活躍の場としてとても大きな意味があったと思います。彼らにとって大きな経験ですし、収入が安定することでプロジェクトに集中できます。5年間というプロジェクトの中で成し遂げられることは決して多くはないですが、長い目で見て、彼らにとっても何年か後には必ず何かの形になると思いました」
ナッツがお酒に!? 事業は意外なところで実を結んだ
按田さんが参加した草の根技術協力事業が終了して5年----。自身の言葉どおり、現地での活動が形になりました。10月18日、サッポロビールから、サチャインチの搾りかすを活用した発泡酒「HOPPIN' GARAGE インカの扉」が発売されたのです。
按田さんのペルーでの活動に着目したサッポロビールの「HOPPIN' GARAGE」ブランドが、按田さんのストーリーを新作ビールにしてみないかと声をかけ、実現しました。
「ペルーでは、日本と全く違う生活・文化様式を目の当たりにして本当に驚きました。自分が信じていた善悪や美意識が、実は社会的枠組みの中でいつのまにか標準装備されたものにすぎなかったのだと気づいて、それまで自分が囚われていたことから解き放たれました。そういった体験が、サッポロビールのブランド『HOPPIN' GARAGE』の、『ビールの固定概念に捉われない商品開発』というコンセプトと親和性があったのだと思います」。そう按田さんは話します。