最新記事

国際協力

草の根技術協力が結実! ペルーのスーパーフードから生まれたサッポロビール「インカの扉」の秘密

2022年10月31日(月)12時40分
※JICAトピックスより転載

冷蔵庫のないアマゾンで、日本の保存食の知恵を活用

「昔からの知人である大橋さんが、2011年出版の自著『冷蔵庫いらずのレシピ』を見て、お声がけしてくれたんです。冷蔵庫が一般的ではないアマゾンで、日本の保存食の知恵を活用したいとのことでした。どんな成果が出せるかは未知数でしたが、挑戦してみたいと思いました」。按田さんはそう振り返ります。

jicatopics20221031-6.jpg

按田優子さん

jicatopics20221031-7.jpg

按田さん私物の自著『冷蔵庫いらずのレシピ』

jicatopics20221031-8.jpg

左)按田さんが経営する「按田餃子」代々木上原店。ミシュランガイドの「ビブグルマン」(ミシュランガイドで、価格以上の満足感が得られる料理に与えられる評価)に7年連続で選出されている人気店(右)メインメニューの「水餃子定食」

按田さんは、年1回のペースでペルーに渡り、3週間から1ヵ月ほど滞在すること6回。どのような気候でどのような果物や植物が育つのかを知るため、乾季の始まりや雨季真っ只中など、さまざまな季節に訪れました。現地では、鶏1羽を1週間食べ繋ぐための保存方法を考えたり、農家の方々とサチャインチを使った料理コンテストを開催したり。気候風土に寄り添ったサチャインチの加工方法や、現地で調達できる食材と組み合わせたレシピの提案など、現地のプロジェクトメンバーと模索する日々でした。

「草の根技術協力事業での活動は、現地の若い農業技師たちの活躍の場としてとても大きな意味があったと思います。彼らにとって大きな経験ですし、収入が安定することでプロジェクトに集中できます。5年間というプロジェクトの中で成し遂げられることは決して多くはないですが、長い目で見て、彼らにとっても何年か後には必ず何かの形になると思いました」

jicatopics20221031-9.jpg

(左上)サチャインチを栽培する農家を対象に開催した説明会(右上)現地の食材を活用した料理教室を開催(下)現地のプロジェクトメンバーと記念撮影。左端が大橋さん、左から6人目が按田さん

ナッツがお酒に!? 事業は意外なところで実を結んだ

按田さんが参加した草の根技術協力事業が終了して5年----。自身の言葉どおり、現地での活動が形になりました。10月18日、サッポロビールから、サチャインチの搾りかすを活用した発泡酒「HOPPIN' GARAGE インカの扉」が発売されたのです。

按田さんのペルーでの活動に着目したサッポロビールの「HOPPIN' GARAGE」ブランドが、按田さんのストーリーを新作ビールにしてみないかと声をかけ、実現しました。

「ペルーでは、日本と全く違う生活・文化様式を目の当たりにして本当に驚きました。自分が信じていた善悪や美意識が、実は社会的枠組みの中でいつのまにか標準装備されたものにすぎなかったのだと気づいて、それまで自分が囚われていたことから解き放たれました。そういった体験が、サッポロビールのブランド『HOPPIN' GARAGE』の、『ビールの固定概念に捉われない商品開発』というコンセプトと親和性があったのだと思います」。そう按田さんは話します。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中