最新記事

韓国

韓国「NOポケモンパン」始まるか? 工場での死亡事故巡り「血の付いたパン食べられるか」と不買運動

2022年10月20日(木)21時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
献花し黙祷する人々

10月20日、SPCグループ本社前でSPL工場で亡くなった女性労働者の追悼行事が行われた KBS News / YouTube

<ポケモンパンはじめダンキン、バスキンロビンス、シェイクシャックなどを傘下にもつ企業に不買運動が広がっている>

「血のついたパンを食べられるか」「労働者の血がついたパンを買って食べないでください」──。今、韓国のSNSではこんなメッセージが拡散している。

事件は10月15日早朝に起きた。京畿道平沢市にあるパン工場で22歳の女性労働者が、高さ1mほどのサンドイッチ用ソースの原料を混ぜる装置で作業中、上半身を挟まれて死亡した。ところが、事故後に韓国雇用労働部(日本の厚生労働省に相当)が作業中止命令を下した一部装置を除き、残りの機械では作業が続けられたことが明らかになり、単なる労働災害事故ということを越え、会社の非常識な対応に対する怒りが爆発して不買運動が始まったのだ。中央日報など韓国メディアが報じた。

何年も事故が続いていた工場

事故が起きた製パン工場は、韓国の食品業界大手SPCグループ傘下のSPL製パン工場で、SPCグループのベーカリー向けのパン生地や食パン、サンドイッチ、コーヒーなどを製造するアジア最大規模のパン工場だという。事故で亡くなった女性は、この工場で働いて母親と弟を扶養しており、いつかSPC系の人気ベーカリーチェーン「パリバゲット」のフランチャイズ・オーナーになることを目標にして働いていたという。

事故直後に彼女を救い出したのは同僚の労働者たちだった。彼らは機械を満たしていた材料を捨てて女性を救助しようとしたという。事故当時は40人を超える労働者たちが勤務中だったが、遺体を直接収容した同僚の他にもショックを受けた者が多かった。それにも関わらず、その大半は翌日すぐ現場作業に投入されたという。警察の現場検証によると、この機械はカバーを開けば自動停止する安全装置がなかったことも明らかになっている。

実はこの工場ではわずか8日前にも一人の労働者が機械に手を挟めて、抜け出すまで20分もかかる事故があったばかりだった。しかも、この労働者が3カ月の短期派遣労働者ということで会社の担当者は病院に連れて行くことなどせず「自分で勝手に病院に行ってください。派遣会社には連絡しますから」と言ったという。

この工場ではさらにさかのぼると、2017年から今年9月まで労災事故で37人がケガをしており、そのうち挟まれた事故が15人(40.5%)と最も多かったことが分かっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中