最新記事

東南アジア

ASEAN、ミャンマー問題で重大局面 マレーシア外相「反軍政組織を取り込むべき」

2022年9月20日(火)18時30分
大塚智彦
ASEANの旗 

ASEANの旗 LIM HUEY TENG / REUTERS

<進展しない状況に内政不干渉の原則を転換するか?>

ミャンマー問題に取り組んできた東南アジア諸国連合(ASEAN)が一向に進まない和平・仲介の方針を転換して、これまで「交渉相手」としてきた軍事政権側に見切りをつけ、反軍政の立場の民主派組織との関係を強化すべきとの意見が出てきた。

これは国連総会に出席のためにニューヨークの国連本部を訪れているマレーシアのサイフディン・アブドラ外相が9月19日に記者団に明らかにしたもので、もし民主派組織の取り込みが実現すればASEANにとって大きな方針転換となると同時に、これまでミャンマー問題に関して主導権を握っていたインドネシアから、マレーシアによるASEAN主導という新たな動きへの転換という意味がある。

マレーシアのサイフディン外相はかねてからASEANによるミャンマー問題へのアプローチが手ぬるく、実質的な効果をほとんど挙げていないことに不満を表明し、和解交渉に全く応じないミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官が率いる軍政と決別して、民主派が組織した「国家統一政府(NUG)」を交渉相手とするべきだと主張してきた。

だがこれまではミャンマー軍事政権の後ろ盾となっている中国への影響を懸念するラオスやカンボジアなどの反対で実現しなかった経緯がある。

NUGと接触し、加盟国に呼び掛け

ところがサイフディン外相はニューヨークでの会見でASEAN加盟国として初めてNUG側とニューヨークで接触したことを明らかにするとともに、ASEAN加盟国に対して「軍政との交渉を中止して今後はNUGをミャンマー代表として迎えいれるべきだ」との考えを明らかにした。

サイフディン外相によるとNUGとの接触はミャンマー北西部ザガイン地方域の村の学校を軍が砲撃して少なくとも7人の児童が死亡、クーデター以降最悪となる児童の犠牲がでたことが伝えられる中で行われたという。

こうしたマレーシアの方針転換に対して他の加盟国がどう応じるかは現段階では不確定だが、国連総会と同時に9月22日にも開催予定のASEAN外相による非公式協議でミャンマー問題が議論されるのは間違いなく、ASEANとしてはミャンマー問題を巡り重大局面を迎えることになるとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ナスダック最高値、エヌビディア決算控

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、FRB当局者は利下げに慎

ワールド

米、ウクライナ軍事訓練員派遣の予定ない=軍制服組ト

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中