ASEAN、ミャンマー問題で重大局面 マレーシア外相「反軍政組織を取り込むべき」
実質的効果のない「5項目合意」
ASEANはミャンマーのクーデター直後から戦闘停止やクーデター直後に身柄を拘束されたノーベル平和賞受賞者でそれまでの民主政府の実質的指導者だったアウン・サン・スー・チー最高顧問兼外相やウィン・ミン大統領らの釈放を求めて動きを見せた。
当初はルトノ・マルスディ外相をミャンマーに派遣してミン・アウン・フライン国軍司令官との交渉に乗り出し、2021年4月にはジャカルタでASEAN緊急首脳会議を開催、ミン・アウン・フライン国軍司令官との面談による協議を実現させるなどインドネシアのジョコ・ウィドド大統領が主導権を発揮した。
この緊急首脳会では各国首脳からスー・チー氏の釈放を求めたがミン・アウン・フライン国軍司令官は拒否した。
その代わり議長声明という形で「5項目の合意」にミン・アウン・フライン国軍司令官ら全ての参加首脳らが合意に達したのだった。
その「5項目の合意」は①武力行使の即時停止②関係者全員で建設的な話し合いを行う③ASEAN特使の受け入れ④人道支援の受け入れ⑤関係者全員とASEAN特使の面会、となっており、以後この合意がASEANとミャンマー軍政との協議の基礎となってきた。
しかし軍政は人道支援の受け入れ、ASEAN特使の受け入れには柔軟な姿勢をみせるものの「武力行使停止」は「民主派勢力側が攻撃してきており治安を攪乱している」と反論。「関係者全員との面会」は「刑事事件の被告であり、公判中の被告との面会を認める国などない」としてスー・チー氏らとの面会を拒絶する姿勢を一貫してとっている。
このためASEANとの交渉は難航というか、実質的には行き詰まりの状況となっているのが現実だ。
当初主導権を握っていたインドネシアのジョコ・ウィドド大統領は11月にバリ島で開催予定のG20首脳会議で議長国ホストとして会議を成功させることに全力を傾注しており、これもマレーシアが業を煮やした一因とみられている。
またサイフディン外相は7月に内外の反対を押し切って軍政が民主活動家の政治犯4人に対する死刑を執行したことがASEANとして軍政に強硬姿勢を示す契機の一つになったことも明らかにした。
11月までに各国で協議を要求
ASEANは11月に首脳会議を予定している。サイフディン外相は「今日から11月までの間に『5項目合意』がミャンマーとの交渉に有効なのかどうか、11月には厳しい問いと答えが求められる。もし有効でないとなると次に何が必要になるかを協議する必要がある」と述べた。
さらにASEAN各国に対して「11月の会議で次の方針を協議するのではなく、今日から11月までの間に各国が話し合い、11月の会議でコンセンサスを得るようにしなければならない」との考えを示した。
こうしたマレーシアの動きはNUGはじめミャンマーの反軍政組織からは歓迎されておいるが、その一方でNUGを非合法組織と位置付けて地下にもぐったり国外で活動したりして情報発信を続けるメンバーの発見、摘発に血眼を挙げている軍政からは激しい反発が予想されている。
ASEAN首脳会議には軍政代表は出席を拒否される見込みで、ミャンマー抜きの会議でどこまでASEANがまとまって厳しい姿勢を軍政に突き付けるか、地域の連合体としてその手腕が試されることになる。