中国経済にとってコロナ規制が「続けるも地獄・やめるも地獄」な理由
China’s Lockdown Stagnation
ロックダウン下の集合住宅に食事を配達する業者(海南省三亜市) CHINA DAILYーREUTERS
<共産党政権が堅持する「ゼロコロナ」政策のせいで繰り返される厳格すぎる規制。だが人々が萎縮し、需要が縮小する理由はほかにもある>
新型コロナウイルスの新たな感染拡大で中国の長期にわたるゼロコロナ政策が試されるなか、中国全土にまたロックダウン(都市封鎖)の波が広がっている。
中国の感染状況は(他の国々に比べれば)小規模で比較的抑制できていた。それでも今回、四川省成都や広東省深圳を含む主要都市で約3億人以上が封鎖下に置かれ、中国経済の先行きには暗雲が立ち込めている。
年内に政府がゼロコロナ政策を撤廃する可能性は低い。習近平(シー・チンピン)国家主席が直接指揮を執っているのは明白で、規制緩和後に大規模な感染拡大が起ころうものなら、多くの地方政府関係者のキャリアが脅かされる。
コロナ制御に当たる体制には何百万人もが従事し、それ自体が自律的に動いている。その解体は至難の業だが、とはいえこれも、中国経済と政治を停滞させている一連の政策のほんの一部にすぎない。
ゼロコロナ政策の撤廃は新たな問題を生むだけだろう。中国が大多数の先進諸国のようなポストコロナの段階に一足飛びに移行することは不可能だ。これらの国々ではワクチンの普及や感染による集団免疫獲得、規制疲れの世論や医療体制の改善などによって、コロナは「管理可能な問題」と見なされつつある。だが中国では、規制撤廃が医療崩壊を招くことになりかねない。
ワクチン効果は弱く集団免疫もなし
中国のワクチン供給量は十分だが、効果はmRNAワクチンに比べて弱い。当初の武漢以来、深刻な感染爆発も経験していないため、集団免疫も獲得できていない。今年3月に鉄壁を破って香港で感染が広がり、死亡率が世界最悪に達した際には、当局者はさぞ気をもんだことだろう。
今年になって果てしなく繰り返されるロックダウンは、もはや中国の風物詩となった。封鎖解除後も、街に自由や消費が戻る気配はない。代わりに人々は次の感染拡大に備えて警戒を続ける。需要は縮み、人々は国内旅行にも及び腰だ。
その間にも、規制継続の金銭的、人的負担は地方政府に重くのしかかる。故郷から遠く離れた土地で突然隔離されるのではないかという恐怖は出稼ぎ労働者たちに蔓延し、彼らの送金減少で地方政府の財源は縮小するばかりだ。