トラス英次期首相、内憂外患で山積する課題に直面
英与党保守党は9月5日、ジョンソン首相の後任となる新党首にエリザベス・トラス外相を選出した。トラス氏が率いる新政権は物価高騰に伴う国民の生活費増大や労働紛争といった内政面の大きな課題を突き付けられている。同日、ロンドンで代表撮影(2022年 ロイター)
英与党保守党は5日、ジョンソン首相の後任となる新党首にエリザベス・トラス外相を選出した。トラス氏が率いる新政権は物価高騰に伴う国民の生活費増大や労働紛争といった内政面の大きな課題を突き付けられるうえに、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)後の諸問題やウクライナの戦争など外交上の懸案を抱えた船出になる。
主な課題は次の通り。
生活費増大
目下の英国で最大の課題は、40年ぶりの物価高とエネルギー価格高騰、長引く恐れがある景気後退(リセッション)に苦しむ国民にどう支援の手を差し伸べるかだろう。
昨年は各家庭で平均1277ポンドだったエネルギー支出は今年10月以降、一気に3549ポンドに跳ね上がり、来年はもっと高まる見通しだ。
トラス氏は先月、生活費が危機的に膨らんでいる国民を支援する手段としては、各種給付金よりも減税が好ましいとの見解を示した。ただ現時点では、より幅広い家計支援策を打ち出すとみられている。
またトラス氏は首相就任後すぐに、減税とともに緊急的なエネルギー危機対策予算を計上すると約束。これらの措置には、党首選を争ったリシ・スナク氏が財務相時代に導入した国民保険料引き上げの撤回も含まれるだろう。
もっともこれで助かるのは主に所得の高い層になりそうだ。
ストライキ
新政権は発足後ただちに、強硬姿勢の労組指導者への対応を迫られる。英国では鉄道労働者から法曹家、医療従事者、大学職員までさまざまな働き手がストライキを実行中か計画している状況にある。物価高を受け、賃上げ要求に力が入っているからだ。
トラス氏は、労組によるストを抑えるために「厳格かつ断固とした」行動を取ると明言している。
ブレグジット
トラス氏は、ブレグジットの実務的な処理に取り組みつつ、前任のジョンソン氏が合意したEUとの離脱協定を修正するという約束を実行する必要がある。トラス氏は外相として、北アイルランド議定書の変更に向けた法案を推進してきた。これはジョンソン政権がEUと取り交わした離脱協定の一部、つまり英領北アイルランドとEU加盟国との開かれた国境を維持する目的で、北アイルランドを実質的にEUの関税圏にとどめるという内容を破棄する動きだ。
英国は長らく、この北アイルランド問題を巡るEUとの交渉で成果を得られない点に不満を持ち、議定書変更法案は英国の立場を守る予防的対応とみなしている。