トラス英次期首相、内憂外患で山積する課題に直面
しかしEU側は、新政権がこうした一方的行動を撤回しない限り、世界最大の研究開発助成プログラム「ホライズン」で英科学者に提供する枠を減らす対抗手段を行使するかもしれない。この対立は最終的に貿易戦争に発展しかねない雲行きと言える。
トラス氏は、まだ英国内で適用されているEUの法令を来年までに全て廃止する方針も表明している。
難民問題
英政府はこれまで、英仏海峡を小型船で渡航してくる亡命希望者をいかに減らすかに苦心を重ねてきた。
複数の政府関係者の話では、今年これらの人数は最大6万人と、過去最高だった昨年の2倍に達する恐れが出てきた。
そこで今年4月、政府は海を渡ってきた亡命希望者の一部をルワンダに移送し、同地で亡命手続きを行わせる計画を発表。その第1便出発は、欧州人権裁判所(ECHR)が直前に差し止めを命令した。
トラス氏は亡命希望者移送計画について、移送先となる国を拡大すると約束した。同氏はこの計画を断行する決意を示すとともに、ECHRが阻止し続けるならば英国はECHRを脱退するための法制化を進めるとしている。
ウクライナ
ロシアのプーチン大統領は、この冬に欧州が経済的痛みに耐えかね、ロシアのウクライナ侵攻に反対姿勢を後退させることを期待している。
英国はこれまでのところウクライナに対する最大の軍需物資支援国の1つで、約7000の対戦車兵器や数百のミサイル、戦闘装甲車を供給してきた。ウクライナ兵の軍事訓練も行っている。トラス氏はこうした英国のウクライナ向け軍事・経済支援を継続すると約束した。
問題は、ウクライナへの国際的な支援が弱くなる場合にどうなるかだ。
ただトラス氏は保守党党首選で、自身が首相になればウクライナにとって英国は「これ以上ないほど強力な同盟国」になると発言している。