惨敗予定だった民主党になぜ逆転の可能性が?──泡沫すぎる共和党候補たち
AGAINST ALL ODDS
共和党のベテラン選挙参謀のジム・ドーナンも、家宅捜索が選挙に与える長期的影響は小さいとみる。「右派は(捜索は政治的なものだと)騒いでいるが、熱狂的なトランプ支持者以外には響かないだろう」
いずれにせよ民主党は逆風が追い風に変わったと見て勢いづいている。今ではこの勢いを何とか投票日まで持たせることが彼らの関心事だ。
共和党は候補者の資質とは無関係に、景気の悪化だけで選挙に勝てると踏んでいるのだろうか。もしそうなら、今回の中間選挙では一部の接戦州で痛い目に遭いかねない。
確かに米経済は厳しい状況だ。インフレ率は今年6月にこの40年で最高を記録、物価高が市民生活を直撃している。それでも世論調査の結果が示すように、共和党の予備選でスキャンダルまみれの候補者が次々に勝利するのを見て、多くの有権者が民主党支持に傾きつつある。
「有権者の関心は生活に直結する問題や経済だけだというのが選挙の常識だが、今の状況はそれとは違うようだ」と、共和党の選挙顧問を務めるマイク・マドリッドは言う。
「こんな状況は見たことがない。有権者の75%が現政権の政策に疑問を持ち、大統領の支持率は30%台まで落ち込んだというのに、政権与党が下院選で健闘し、ことによれば上院選でも勝ちかねないなんて!」
もっとも、「選挙では経済が全て」という考えはここ10年ほどの間に何度か覆されてきた。2010、14、18年の中間選挙では、米経済は上向きか絶好調だったのに、政権与党が何十もの議席を失った。今はそれとは逆の意味で常識が覆されつつある。
供給不足が広がり、ガソリンと食料品の価格は高騰、米経済は景気後退に突入しつつあるとの見方が強まっているが、野党共和党の上院選勝利が危ぶまれているのだ。
「状況がこれだけ悪化しているのに、民主党にまだ希望があるのは、多くの州で良い候補を立てているからだ。それに比べ共和党の候補は見劣りがするか問題含みだ」と言うのは、選挙分析を専門とするニュースレター「クックポリティカル・リポート」のアナリスト、ジェシカ・テーラーだ。
「ただし、これは初期の調査結果であり、ここ10年ほどは有権者が候補者の人となりよりも、政党で選ぶ傾向が強まっている」
そうかもしれない。だが出身州で幅広い支持をつかんでいる現職の議員は所属政党が不人気であっても勝ち目があると、民主党中道派のシンクタンク「第三の道」の共同創設者、マット・ベネットは話す。