最新記事

米政治

惨敗予定だった民主党になぜ逆転の可能性が?──泡沫すぎる共和党候補たち

AGAINST ALL ODDS

2022年9月1日(木)13時19分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)
アメリカ議会

ILLUSTRATION BY ALEX FINE FOR NEWSWEEK

<有権者の75%が現政権の政策に疑問を持ち、大統領支持率が30%台にまで落ち込んでいるにもかかわらず、中間選挙で番狂わせが起こる理由とは? トランプだけでない、共和党のぐだぐだ>

アメリカでは、インフレとガソリン価格の高騰、それにジョー・バイデン大統領の低支持率で、今年の中間選挙で共和党が躍進するのは確実。特に前回の選挙で民主党に多数派の座を奪われた上院では、共和党が優位を奪還するのは間違いない──。

米政界ではほんの数カ月前まで、こんな見方が当然のように語られていた。

ところが、11月8日の投票日に向けて選挙戦が本格化する9月の連休を前に、正反対の見方が有力になってきた。民主党が上院の多数派を維持し、場合によっては、その差を広げる可能性さえあるというのだ。

なぜか。まず、いくつかの州の共和党上院予備選において、本選で民主党候補に勝てる見込みの乏しい過激論者が選ばれた。

6月に共和党系判事が過半数を占める連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める判例「ロー対ウェード判決」を覆して、党派を超えた大論争を巻き起こしていることも響きそうだ。

一部の共和党候補が、ドナルド・トランプ前大統領の応援を得たいがために、トランプが敗北した2020年米大統領選は不正だったという嘘に同調したり、トランプ支持者による米連邦議会議事堂襲撃事件を不問にしていることも危険だ。

こうした態度は、共和党予備選ではウケたかもしれないが、無党派層や民主党支持者には嫌悪されている。

FBIが8月8日にトランプのフロリダ州の私邸マールアラーゴの家宅捜索に入ったことも、今後に影響を与えるかもしれない。

FBIは、トランプが大統領退任時にホワイトハウスから不正に持ち出したとされる、大統領職に関連する文書(連邦政府の所有物であり、機密文書も含まれる)を押収しており、トランプが刑事責任を問われる可能性もささやかれている。

調査会社ファイブサーティーエイト・ドットコムによると、8月半ばの時点で、民主党が中間選挙で上院の多数派を維持する可能性は61%。2カ月前は共和党が多数派を奪還する可能性が60%とされていたから、状況がまるきり逆転した格好だ。

上院の議席は100(50州から2人ずつ)で、現在、民主党と共和党が50議席ずつの均衡状態にある。だが、実際の採決で賛否が同数となった場合、民主党のカマラ・ハリス副大統領の投票により均衡が破られるため、現在は民主党がギリギリで多数派となっている。

11月の中間選挙で改選の対象となるのは35議席。このうち25議席は現職が再選される可能性が高いが、残り10議席は激戦が予想されている。民主党としては1議席も失うわけにはいかないのだが、それは不可能だと、つい最近までは思われていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中