惨敗予定だった民主党になぜ逆転の可能性が?──泡沫すぎる共和党候補たち
AGAINST ALL ODDS
ILLUSTRATION BY ALEX FINE FOR NEWSWEEK
<有権者の75%が現政権の政策に疑問を持ち、大統領支持率が30%台にまで落ち込んでいるにもかかわらず、中間選挙で番狂わせが起こる理由とは? トランプだけでない、共和党のぐだぐだ>
アメリカでは、インフレとガソリン価格の高騰、それにジョー・バイデン大統領の低支持率で、今年の中間選挙で共和党が躍進するのは確実。特に前回の選挙で民主党に多数派の座を奪われた上院では、共和党が優位を奪還するのは間違いない──。
米政界ではほんの数カ月前まで、こんな見方が当然のように語られていた。
ところが、11月8日の投票日に向けて選挙戦が本格化する9月の連休を前に、正反対の見方が有力になってきた。民主党が上院の多数派を維持し、場合によっては、その差を広げる可能性さえあるというのだ。
なぜか。まず、いくつかの州の共和党上院予備選において、本選で民主党候補に勝てる見込みの乏しい過激論者が選ばれた。
6月に共和党系判事が過半数を占める連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める判例「ロー対ウェード判決」を覆して、党派を超えた大論争を巻き起こしていることも響きそうだ。
一部の共和党候補が、ドナルド・トランプ前大統領の応援を得たいがために、トランプが敗北した2020年米大統領選は不正だったという嘘に同調したり、トランプ支持者による米連邦議会議事堂襲撃事件を不問にしていることも危険だ。
こうした態度は、共和党予備選ではウケたかもしれないが、無党派層や民主党支持者には嫌悪されている。
FBIが8月8日にトランプのフロリダ州の私邸マールアラーゴの家宅捜索に入ったことも、今後に影響を与えるかもしれない。
FBIは、トランプが大統領退任時にホワイトハウスから不正に持ち出したとされる、大統領職に関連する文書(連邦政府の所有物であり、機密文書も含まれる)を押収しており、トランプが刑事責任を問われる可能性もささやかれている。
調査会社ファイブサーティーエイト・ドットコムによると、8月半ばの時点で、民主党が中間選挙で上院の多数派を維持する可能性は61%。2カ月前は共和党が多数派を奪還する可能性が60%とされていたから、状況がまるきり逆転した格好だ。
上院の議席は100(50州から2人ずつ)で、現在、民主党と共和党が50議席ずつの均衡状態にある。だが、実際の採決で賛否が同数となった場合、民主党のカマラ・ハリス副大統領の投票により均衡が破られるため、現在は民主党がギリギリで多数派となっている。
11月の中間選挙で改選の対象となるのは35議席。このうち25議席は現職が再選される可能性が高いが、残り10議席は激戦が予想されている。民主党としては1議席も失うわけにはいかないのだが、それは不可能だと、つい最近までは思われていた。