安倍氏国葬に国内外4300人参列、割れる賛否 岸田首相、弔問外交をアピール
臨時国会で説明責任
安倍元首相は7月8日、参議院選挙の応援に駆けつけた奈良市で銃撃され、死亡した。逮捕された容疑者が動機として旧統一教会と母親の関係を挙げ、それをきっかけに安倍氏をはじめ自民党の議員が協会と接点があったことが次々と表面化。国葬反対の世論が強まるとともに、岸田内閣の支持率も低下した。
法政大学の白鳥浩教授(現代政治分析)は、臨時国会で2つの説明責任を果たすことが短期的な岸田政権の課題だと指摘。「1つは国葬の費用、2つめは国葬の法的な手続き上の位置づけ。自民党が統一教会と関係を絶つとは具体的に何をすることかについても説明が必要だ」と語る。
報道各社が9月中旬に実施した世論調査によると、政権支持率は軒並み急落。毎日新聞の調査では36%から29%に低下し、初めて30%を割り込んだ。日本経済新聞は14ポイント減の43%、共同通通信は13.9ポイント減の40.2%だった。最も厳しい結果となった毎日新聞の調査によると、旧統一教会を巡る対応を評価しないは72%、国葬に反対は62%だった。
国葬前日の26日に日本武道館近くにいた38歳の女性会社員は「(国葬は)すべきではないと思う。税金で行うということには疑問がある」と語った。一方、28歳の男性は「あす実家に帰るので、長年総理として務めた安倍晋三さんを追悼したいと思ってきょう来た」と話した。
集団的自衛権で国論を二分
安倍氏は2006年9月から1年間首相を務め、体調不良を理由に退任。12年12月に再登板し、20年8月に体調不良で辞めるまで歴代最長の7年8カ月在任した。
第2次安倍政権は看板政策「アベノミクス」を掲げてデフレからの脱却を目指し、日銀の大規模緩和で円安と株高を演出した。国論を二分する中で集団的自衛権の行使を可能にしたほか、「地球儀を俯瞰する外交」を掲げ、米国以外にもインドやオーストラリア、英国などとの関係強化に動いた。
国葬は約16億6000万円という費用も批判されている。岸田首相は「弔問外交」という成果を強調する考えで、26日から28日にかけて来日した要人と30以上の個別会談をこなす。
26日午後には米ハリス副大統領と会い、台湾情勢や日本の防衛力強化などを協議。27日午前にはオーストラリアのアルバニージー首相やインドのモディ首相と会談し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携することを確認した。
(杉山健太郎、竹本能文 編集:石田仁志、久保信博)