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イギリストラス英首相、エネルギー費対策発表 家庭の光熱費上限を年間40万円に
トラス英首相(写真)は、家計のエネルギー料金の上限を2年間、年2500ポンド程度に抑える計画を発表した。ウクライナ戦争による経済的ショックを抑える狙いがあるが、政府には約1500億ポンドの負担増になるとみられる。7日撮影(2022年 ロイター/John Sibley)
トラス英首相は8日、家計のエネルギー料金の上限を2年間、年2500ポンド程度(=約414000円)に抑える計画を発表した。ウクライナ戦争による経済的ショックを抑える狙いがあるが、政府には約1500億ポンド(=約24兆8,632億円)の負担増になるとみられる。
家庭のエネルギー料金が4倍近くに跳ね上がり、リセッション(景気後退)に直面する中、トラス氏は消費者と企業を守るために迅速かつ大胆に行動すると表明した。
議会で「今年の冬から来年冬にかけて国を支え、二度と同じ状況に陥らないよう物価高の根本原因に対処している」と強調。「大胆になる時だ。われわれは世界的なエネルギー危機に直面しており、コストのかからない選択肢はない」と訴えた。
今回の計画では、平均的な家庭のエネルギー料金は2年間、年間2500ポンド程度に抑えられ、10月に予定されている80%の値上がりを回避することになる。
政府はインフレ率を最大5%ポイント抑制できるとみている。
ガスの卸売価格は変動が激しいため、トラス氏はこの措置のコストを明らかにしていない。費用は政府の借り入れで賄われる。クワーテング財務相が月内に公表する財政報告で明らかになる見込み。
エコノミストは政府の借り入れ額が1000億ポンド以上増える恐れがあるとみている。
ドイツ銀行はエネルギー費対策と減税計画による財政負担が1790億ポンドに上る可能性があると指摘した。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受けた同国の記録的な公的支出の半分程度に相当する。
一方、JPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、ヒュー・ギンバー氏は「財政出動の規模は大きいが、家計や企業が直面している問題も同じぐらい大きい」と指摘する。
欧州のエネルギー価格は新型コロナ禍からの回復で上昇し始め、ロシアのウクライナ侵攻以降急騰している。
家計の年間エネルギー代の平均は4月に54%値上がりして1971ポンドとなり、10月には80%上昇して3549ポンドに達する見通し。
インフレ率は7月の10.1%と1982年2月以来の高水準を記録した。イングランド銀行(英中央銀行)は、10月のインフレ率が13%を超えると予想している。政府は今回の措置がインフレ率を最大5%ポイント押し下げると期待する。
政府の発表を受けて、エコノミストは来年初め頃に見込まれるインフレ率のピークの予想水準を下方修正した。特に予想値が高かったシティは、17.4%から11.7%に引き下げた。
また、コンサルタント会社パンテオン・マクロエコノミクスは、英経済は景気後退(リセッション)入りを辛うじて回避できるとの見方を示した。