選挙応援「ダサい」、親への怒り、マッチングサイト...統一教会2世たちの苦悩【石戸諭ルポ中編】
JUDGMENT DAY
「あぁ、その怒りは分かりますね」と理解を示したのは、統一教会信者が起業した会社で働く20代の2世信者だ。
「僕はそれでも、信仰には大切なところはあると思っています。全部は信じていないけど、自分のアイデンティティーでもある」
断っておくと、彼の会社は違法行為には加担していないし、統一教会の支援の下で献金目的につくられたものでもない。信者以外の従業員も働いており、私が確認した範囲内ではあるが、内輪の勧誘活動もない。あくまで信者が自分のやりたいビジネスのために起業したというだけだ。
彼の親は数千万円以上の献金をしている。そんな親の姿を見て育ったせいか、彼やその周囲の2世は献金には冷淡で「全くしない無料会員」や「気が向いたらする」程度の信者も少なくない。
2世の中には韓国にある統一教会系の鮮文大学への留学組もいる。彼らは一般企業への就職を諦めざるを得なくなり、2世のコミュニティーの中で職を探したという経験をすることになる。
「だって、就職も結婚も普通には無理でしょ。僕も2世と結婚したいです。だって、普通の人と交際しても、いつかは信仰や家族を紹介しないといけないし、相手の親に説明も必要ですよね? この状況で、結婚が許されるとも思えません」
彼らの価値観に合わせたのか、教団の姿勢にも変化が見られる。
その象徴が結婚だ。文の死去以降、結婚は教団が作り上げたマッチングサイトに移行した。親同士が最初に会って当人たちが出会うかを決めたり、自分や相手に求める信仰の度合いを記したりするのが特色だが、基本的な中身は他のマッチングサイトと変わらない。
信仰の度合いは、最も熱心なのが「伝統」、平日は何もせず礼拝やイベントに顔を出す「自律」、ごくたまに活動する「妥協」の三段階に分けられている。当然といえば当然だが、平日早朝から儀式をする「伝統」を選ぶ割合は少なくなり、日常生活と折り合いをつけられる「自律」や「妥協」を選ぶ信者が多くなる。
昔は神の意思に反するとされていた離婚も認められるようになってきた。
彼は言う。
「統一教会も過去を反省して、偽装勧誘や高額献金、政治活動の問題点を明らかにしたほうがいい。僕たちはただ信仰と共に穏やかに暮らしたいだけだから......」
※ルポ後編:統一教会と関係を絶つとは何を意味するか。カルト対策に魔法の杖はない に続く。