米VISA、児童ポルノ収益化を支援する意図があった...米裁判所が認定
米政治専門紙の『ヒル』は今年4月、マスターカードがアダルトコンテンツ販売者向けのポリシーを更新したと報じた。更新を受けて販売者側は、コンテンツに関与する人々の身元と年齢を確認し、出演への同意を文書で保存することが求められる。コンテンツ業社へ収益を送金する銀行側に対しても、非合法動画に関する審査プロセスを用意することなどの要件を定めている。
同社の顧客関係担当副社長は、ここ数年間でインターネットにコンテンツをアップロードすることがかつてなく容易になったと指摘し、その結果生じうるリスクに対応するためのポリシー変更であると説明している。盗撮や元恋人が私的動画を拡散するリベンジポルノが問題となっており、こうした事件の被害を未然に防止するねらいがあるとみられる。
1000万本の動画を削除する大騒動
Pornhubに対しては昨年、VISA、マスターカード、ディスカバーの3社が揃って決済手段の提供を一時停止している。これを重くみたサイト側は改善策として、身元確認が取れていないすべてのユーザーが投稿した動画を一斉に削除した。米テックサイトの「アーズ・テクニクカ」は、掲載中だったコンテンツの約80%にあたる約1000万本の動画を削除するという大規模な対応だったと報じている。
2021年には、実質的なアダルト動画配布サイトとなっていた「オンリー・ファンズ」が性的コンテンツの取り扱いを停止すると発表し、大きな話題となった。米CNNはこの一件においても、カード会社の意向が引き金になったと報じている。同サイトは1億3000万人のユーザーと200万人以上のコンテンツ提供者が参加する大規模なプラットフォームであった。
国内でも起きているアダルトコンテンツの制限問題
厳格化の動きに、アダルトコンテンツの業界団体は激しく反発している。アダルト動画の出演者たちはただでさえコロナによる活動制限で経済的打撃を受けており、決済手段が制限されれば生活がますます困窮すると主張している。日本で6月に施行された通称「アダルトビデオ新法」でも、出演者や業界関係者の職が奪われるとの指摘があるが、これとよく似た構図がアメリカでも発生しているようだ。
国内では、デジタルコンテンツを販売するDMMが7月29日、マスターカードによる決済を終了した。DMMは、条件面での折り合いがつかなかったと説明している。理由の詳細は公表されていないが、マスターカード側の表現規制に抵触したのではないかとの推測も流れている。
今回訴訟に直面したVISAの一件を受け、カード会社側が特定のコンテンツ事業者との関係を見直す動きは、今後国内外ともにさらに加速する可能性もありそうだ。