最新記事

ポルノサイト

米VISA、児童ポルノ収益化を支援する意図があった...米裁判所が認定

2022年8月10日(水)17時55分
青葉やまと

米政治専門紙の『ヒル』は今年4月、マスターカードがアダルトコンテンツ販売者向けのポリシーを更新したと報じた。更新を受けて販売者側は、コンテンツに関与する人々の身元と年齢を確認し、出演への同意を文書で保存することが求められる。コンテンツ業社へ収益を送金する銀行側に対しても、非合法動画に関する審査プロセスを用意することなどの要件を定めている。

同社の顧客関係担当副社長は、ここ数年間でインターネットにコンテンツをアップロードすることがかつてなく容易になったと指摘し、その結果生じうるリスクに対応するためのポリシー変更であると説明している。盗撮や元恋人が私的動画を拡散するリベンジポルノが問題となっており、こうした事件の被害を未然に防止するねらいがあるとみられる。

1000万本の動画を削除する大騒動

Pornhubに対しては昨年、VISA、マスターカード、ディスカバーの3社が揃って決済手段の提供を一時停止している。これを重くみたサイト側は改善策として、身元確認が取れていないすべてのユーザーが投稿した動画を一斉に削除した。米テックサイトの「アーズ・テクニクカ」は、掲載中だったコンテンツの約80%にあたる約1000万本の動画を削除するという大規模な対応だったと報じている。

2021年には、実質的なアダルト動画配布サイトとなっていた「オンリー・ファンズ」が性的コンテンツの取り扱いを停止すると発表し、大きな話題となった。米CNNはこの一件においても、カード会社の意向が引き金になったと報じている。同サイトは1億3000万人のユーザーと200万人以上のコンテンツ提供者が参加する大規模なプラットフォームであった。

国内でも起きているアダルトコンテンツの制限問題

厳格化の動きに、アダルトコンテンツの業界団体は激しく反発している。アダルト動画の出演者たちはただでさえコロナによる活動制限で経済的打撃を受けており、決済手段が制限されれば生活がますます困窮すると主張している。日本で6月に施行された通称「アダルトビデオ新法」でも、出演者や業界関係者の職が奪われるとの指摘があるが、これとよく似た構図がアメリカでも発生しているようだ。

国内では、デジタルコンテンツを販売するDMMが7月29日、マスターカードによる決済を終了した。DMMは、条件面での折り合いがつかなかったと説明している。理由の詳細は公表されていないが、マスターカード側の表現規制に抵触したのではないかとの推測も流れている。

今回訴訟に直面したVISAの一件を受け、カード会社側が特定のコンテンツ事業者との関係を見直す動きは、今後国内外ともにさらに加速する可能性もありそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領が戒厳令、国会は「無効」と判断 軍も介入

ビジネス

米求人件数、10月は予想上回る増加 解雇は減少

ワールド

シリア北東部で新たな戦線、米支援クルド勢力と政府軍

ワールド

バイデン氏、アンゴラ大統領と会談 アフリカへの長期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計画──ロシア情報機関
  • 4
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 5
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 6
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 7
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    「92種類のミネラル含む」シーモス TikTokで健康効…
  • 10
    赤字は3億ドルに...サンフランシスコから名物「ケー…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中