残虐行為を目撃し、飢餓と恐怖に耐えた子供の心と体に「戦争後」に起きること
THE CHILDREN OF WAR
ルワンダとブルンジの子供を対象にしたブリュッセル自由大学のフィリップ・バーウィンプ教授(開発経済学)の研究によると、1990年代に紛争にさらされたことが、その後の人生で身長と体重の大幅かつ持続的な減少に関係している。こうした変化が教育と収入の低下につながるとする研究も多い。
ウクライナ政府は、新型コロナウイルスのパンデミックの際に構築された遠隔学習のインフラを動員して、子供と学校のつながりを維持しようと積極的に働き掛けている。
防空壕からタブレット端末でやりとりをする子供もいれば、ヨーロッパに移住した後も遠隔授業に参加してクラスメイトと連絡を取り合う子供もいる。
ユニセフやセーブ・ザ・チルドレンなど、ウクライナの現地で活動する支援団体は当初から、すぐにアクセスできなくなるかもしれない地域に食糧や浄水タブレット、衛生用品、医療品を届けるだけでなく、前線近くに「レクリエーション・キット」や「教育キット」を配っている。
教育キットは携帯しやすく、ペンや紙のほかに算数などの指導マニュアルもあって、近くにいる大人が教えることができる。
レクリエーション・キットは小型トランクほどのブリキ缶に、数種類のボール、ボードゲーム、空気入れ、ネット、チーム分け用のビブスなどが入っており、爆撃の合間にサッカーやバレーボールを楽しめる。
ストレス解消のために、ほんの少しでも平常心を取り戻そうとすることによって、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌が抑えられることが分かっている。
その一方で、国連やNGOなどの援助機関は、ウクライナ支援に多額の寄付や拠出金が殺到して、世界の他の紛争地での援助活動が手薄になることを危惧している。
世界の紛争地で5000万人の子供が栄養失調
ロシアのウクライナ侵攻は、アフガニスタンやイエメンなど非白人・非欧州諸国の紛争に苦しむ子供たちのニーズが、おそらく過去最大に高まっているときに起きた。
こうした国々に向けられるはずの資金が、ウクライナに回されているという直接的な証拠はない。だが、赤十字国際委員会(ICRC)は5月の時点で、今年の人道援助計画の42%しか資金が確保できていないと米NBCニュースに明かしている。昨年の同時期は52%だった。
ユニセフによると、今、世界の紛争地などで生命を脅かす栄養失調に陥っている子供は5000万人に上り、年内にさらに900万人増える恐れがあるという。
資金不足はさまざまな地域での援助活動に打撃を与える。
例えば、アフリカの角地域では、歴史的干ばつによって飢餓と人口移動が加速しており、安全な飲み水や医療の不足も深刻になっている。これにはソマリアとエチオピアとケニアにおける人道援助活動が、過去最大の資金不足に直面していることも影響している。
さらに心配なのは、アフリカの角にある国の多くが、食糧をウクライナ産とロシア産の小麦に頼っていることだ。