残虐行為を目撃し、飢餓と恐怖に耐えた子供の心と体に「戦争後」に起きること
THE CHILDREN OF WAR
その意味では、ソフィアは幸運と言えるだろう。彼女は戦闘を目の当たりにしてから約3週間後の5月10日、状況がさらに悪化する前に脱出した。空腹に耐えるという経験もなく、病気にもならなかった。
戦争の最も広範な影響は、得てして暴力に直接さらされることではないと、国連大学世界開発経済研究所シニアリサーチフェローのパトリシア・ジャスティノは言う。むしろ、暴力を避けようとする人々が安全を確保するために耐え忍ぶ飢餓や病気が深刻な影響をもたらす。
塩漬けの豚肉がなくなるとミチャエワ家のような人々はどうなるのか。マリウポリで多くの人が経験し、今もウクライナ東部で数百万人が経験しているように、電気もなく、ひどく寒いぬれた地下室や瓦礫の中で身を寄せ合って、恐怖に怯えながら何週間も過ごす。
生活の維持に必要なインフラが破壊される。公衆衛生も医療も不足し、警察は機能せず、破壊された残骸の中で無秩序と悪が育まれる。そして何よりも、絶え間ないストレスが過酷な犠牲を強いる。
ブルンジやルワンダ、ボスニア、南スーダン、インドネシアのバンダアチェの戦争生存者に関する研究でも、明確な影響が証明されている。前線が移動するたびに、その後ろに閉じ込められた子供を救うことは時間との戦いになると、ウクライナの救援活動に携わる人々は知っている。
重要な社会的発達の機会を奪われる
小児科医の言う「毒性ストレス反応」を和らげる上で、親は重要な役割を担う。ストレスホルモンのコルチゾールが引き起こす生物学的な反応の連鎖は、後年のさまざまな健康問題に関連する。
長時間のストレスがアドレナリンの分泌を促し、闘争・逃走反応を一気に活性化させて、さらなるストレスに備えるための酵素を体内に送り込む遺伝子のスイッチをオンにする。
そのため、毒性ストレスを受けた子供は感情のコントロールが難しくなる。さらに、体が常に過敏な状態になって正常な発達が阻害される。
さまざまな紛争を生き延びた子供に関する研究から、長引く紛争に耐えている子供は早めに避難した子供より背が低く、成長しても体が小さいことが分かっている。一方、紛争地の学校は基本的に危険な場所で、教育上の障害は完全には回復しない。
戦争を経験した子供の多くは紛争地域に戻らないが、戻った子供、特に最も幼い生存者は、重要な社会的発達の時期を逃す。
体内ではストレスホルモンが遺伝子のスイッチを切り替え、化学反応の変化が始まっている。こうした課題は経済学の研究でも、子供時代に戦争を生き延びた成人の賃金減少、失業率の上昇、労働成果の低下として表れている。