ザワヒリ殺害がアフガニスタンで行われたことが示す、新たなテロの危機
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9.11の終結? ドローン攻撃で殺害されたザワヒリ(右)とビンラディン(2001年) REUTERS
<911同時多発テロの共謀者が、カブールの高級住宅地で家族と暮らしていたことは分かっていた。アフガン撤退の正当性と軍事力を示せたアメリカだが、テロの根源を絶つまでには至っていない理由とは?>
アメリカのドローン(無人機)による攻撃でアルカイダの最高指導者であり9.11同時多発テロの共謀者だったアイマン・アル・ザワヒリが死亡した――ジョー・バイデン米大統領が8月1日に発表したこの内容は、一見すると衝撃的とも、そうでないとも受け取れる。
西側諸国の対テロ戦略のおかげで、テロ組織アルカイダは10年前のような強力なグローバル勢力からは程遠い存在になっている。
その存在感は薄れ、ザワヒリ自身も一昨年の11月にある著名な専門家が「もう殺されたかもしれない」と推測したほど目立たなくなっていた。
その一方で今回の攻撃が示すある事実は、より大きな発見を示唆している。攻撃がアフガニスタンで行われたことだ。
ザワヒリは首都カブールの高級住宅地にある大きな隠れ家に家族と住んでいたことが分かっているが、これはつまりタリバンがアルカイダとの同盟関係の復活をもくろんでいたことを意味する。
バイデンによる攻撃は、差し当たりこの同盟の芽を摘み取ったということだろう。少なくとも、米外交問題評議会のブルース・ホフマン上級研究員(テロ対策担当)は筆者に対して「タリバンが何をしようとしているのか(西側は)把握しているというメッセージを送ったことになる」と語った。これ以上の関わり合いを持つことは、さらなる攻撃を促すという警告だ。
ジハード主義者の影
米同時多発テロの頃からウサマ・ビンラディンの副官だったザワヒリが、彼の後を継いでアルカイダの指導者になったのは当然のことだった。ザワヒリはカリスマ性のない指導者という見方もあるが、現在の状況下では有用な指導者であり、少なくともテロ組織をまとめ上げたと評する向きがあった。
いずれにせよ各国の情報機関やテロ対策機関は、9.11やその他のアメリカ人に対するテロ攻撃に関与したザワヒリを追ってきた。