最新記事

イタリア

イタリア初の女性首相候補は、極右と呼ばれることが嫌いな「極右政党」党首

Populists at the Gates

2022年8月4日(木)14時12分
ミケーレ・バルベロ(ジャーナリスト)
ジョルジャ・メローニ

メローニ率いる「イタリアの同胞」は「唯一の野党」として支持を拡大してきた PIER MARCO TACCA/GETTY IMAGES

<9月25日の総選挙で、ジョルジャ・メローニ率いる「イタリアの同胞」が第1党になる見込み。コロナ復興基金からの莫大な借金、EUとの関係、そして極右政権と、あまりにも重すぎる「ドラギの置き土産」>

イタリアはこの1年半、マリオ・ドラギ首相の下で、数十年ぶりにEUの柱の1本として復権したように見えた。

元ECB(欧州中央銀行)総裁のドラギは、イタリアと近隣諸国が新型コロナウイルスの大流行や、ウクライナの壊滅的な戦争、エネルギー危機を乗り切ろうとするなか、重要な役割を担ってきた。イタリアは再び、フランスやドイツとほぼ同じ影響力を持つようになりつつあった。

しかし7月21日、昨年2月にドラギがほぼ全政党から支持を取り付けて発足した連立政権が崩壊した(ドラギは総選挙まで暫定首相を務める)。選挙モードに突入したイタリアは、最悪のタイミングで不確実性の沼にはまっている。

複数の世論調査から、9月25日に予定されている総選挙では極右政党「イタリアの同胞」が第1党になる可能性が高く、党首のジョルジャ・メローニが、イタリアでは第2次大戦後初となる極右勢力(かつ初の女性)の首相になりそうな勢いだ。

ドラギ政権下で唯一の野党だった「イタリアの同胞」は、ここ数カ月で着実に支持を広げている。現在の支持率は約23%で、中道左派の民主党と拮抗している。

さらにメローニは、極右政党の「同盟」(元「北部同盟」)を率いるマッテオ・サルビニと、中道右派の「フォルツァ・イタリア」を率いるシルビオ・ベルルスコーニ元首相と連合を組んでいる。総選挙の得票率は合わせて約45%に達する見込みで、安定多数の議席を確保できそうだ。

彼ら右派連合が、さまざまな問題に対して具体的にどのような立場を取るのかが不透明なため、EUは不安を抱いていると、シンクタンクのヨーロッパ外交評議会のアルトゥーロ・バルベリは言う。

対ロシアで割れる対応

既にハンガリーとポーランドの右派政権がEUの正当性に疑問を投げ掛け、法の支配や人権、民主主義をめぐる対立が激化している。メローニは極右と呼ばれることを嫌っているが、これら2国の指導者とは似ているようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中