イタリア初の女性首相候補は、極右と呼ばれることが嫌いな「極右政党」党首
Populists at the Gates
メローニの政党は、イタリアのネオ・ファシズムの流れと関連が深く、彼女自身、「大量移民」に対する国境警備の強化や、ヨーロッパの「キリスト教のルーツ」の擁護、「LGBT(性的少数者)ロビー」との戦いを支持している。
ロシアに関しては、イタリアの右派は、各党でバラバラな姿勢を見せている。メローニは対ロシア制裁に反対していたが、戦争が始まってからはウクライナとNATOを断固支持する姿勢を示し、西側が「あらゆる有用な手段」を展開してウクライナを支援することを求めている。
一方で、ベルルスコーニはロシアのウラジーミル・プーチン大統領と長年親交があり、ウクライナに「プーチンの要求を受け入れる」よう促している。サルビニもこれまでロシアの指導者を公然と称賛しており、ウクライナへの武器供与に反対している。
ユーロ圏第3の経済大国であるイタリアは、GDP比で150%を超える世界でも最高水準の公的債務を抱え、投資家やEUから厳しい目を向けられている。
選挙戦では右派陣営の提案の多くが、EUが好む財政緊縮とは程遠い支出拡大を示唆している。フォルツァ・イタリアは年金支給額の引き上げを、同盟は早期退職制度と広範な租税特赦(未申告の所得などを期間内に申告して全額納税すれば、罰金を減免して刑事告発を免除すること)を、それぞれ公約に掲げている。
ドラギの残した置き土産
ドラギ時代の牧歌的な雰囲気から一転してEUとの関係が悪化すれば、イタリアの経済回復は危ぶまれる。EUはコロナ禍復興基金からイタリアに2000億ユーロを割り当てているが、裁判期間の短縮や公共入札ルールの簡素化、公正でオープンな市場競争の促進など、さまざまな改革が条件となっている。
250万ユーロは既に受け取ったが、残りを確保するためには、誰がイタリアの舵を取るにせよ、改革を推し進めなければならない。しかし、強力なロビー団体や行政機関の非効率性を克服して、EUが求める基準を満たすには、右派・左派を問わず不足しがちな決断力が必要だ。
9月末にドラギが退任する頃には、改革の土台づくりの多くは終わっているはずだ。しかし、EUに懐疑的な新政権が誕生した場合、EUとの相互不信が残りのステップを複雑にする可能性があると、政府の顧問を務めるボッコーニ大学(ミラノ)のカルロ・アルトモンテ准教授は言う。
昨春、財政と競争の改革を求めてイタリアに圧力をかけたEUに対し、サルビニは「通知表や官僚的な叱責を控える」ように求めた。