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米外交

中東での「中国包囲網」に? 米政府が推進する「中東版クアッド」I2U2の実力

2022年7月20日(水)10時36分
マイケル・クーゲルマン
I2U2首脳会談

訪問先のイスラエルで「I2U2」のオンライン首脳会談に参加したバイデン(左) EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

<7月14日に初の首脳会談が行われたインド、イスラエル、UAE、アメリカの新しい枠組み「I2U2」の目的と課題、そして実行力を分析する>

「中東版クアッド」の本格始動だ。インド、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカの4カ国で構成される新しい枠組み「I2U2」の初の首脳会談が7月14日、オンラインで開催された。

昨年10月にオンラインの外相会談で発足したI2U2は、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国で構成されるインド太平洋版の「クアッド」に匹敵する存在感こそないが、大きな役割を果たせる可能性は十分にある。

この動きは、それぞれの参加国間の協力関係の進展により後押しされた。特に、2020年にイスラエルとUAEなどアラブ4カ国との国交が正常化されたことが大きかった。

アメリカ政府には、この枠組みを推進しようとする強い動機がある。アメリカは、友好的な国々の地理的範囲を広げ、トランプ前政権下でダメージを負った友好国や同盟国との関係を修復したい。加えて、中東地域への関与を縮小しようとするなかで、この地域の国々との新しい関係を構築したいという思いもある。

インド政府にも、I2U2を推進したい理由がある。自国の戦略的な主体性を損なうことなく、世界でより大きな役割を果たし、アジア以外でもアメリカとの協力を拡大し、エネルギーやビジネスの面で重要性を増す中東諸国との関係を強化したいのだ。

戦略、継続性、実効性のすべてが改善しつつある

昨年秋に発足した時点で、I2U2には大きな課題が3つあった。戦略、継続性、実効性である。しかし、3つの側面全てで課題は克服されつつあるように見える。

まず、戦略の面。「中国に対抗したい」という共通の目的に突き動かされている日米豪印のアジア太平洋版のクアッドとは異なり、I2U2には強力な大義がない。イスラエルとUAEは中国とのビジネス上の関係を強化しつつあり、中国への対抗がI2U2の推進力になるとは考えにくい。

しかし、イランの存在が大きな意味を持つかもしれない。イランはアメリカとイスラエルにとっては宿敵と言ってもいい存在だ。インドとUAEはイランとの良好な関係を望んでいるが、領土紛争やエネルギー面での依存度低下の中で、両国がイランとの関係強化に動くとは考えにくい。

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