平和なパレードにゴミ箱を投げつける男性...そこにあった深い文化的背景とは?
Marching Band Chases After Man Who Threw a Trash Bin at Them in Wild Video
RogerBradley-iStock
<ベルファストで演奏するマーチングバンドに乱暴を働く男性の動画が拡散。だが彼の行動には、この土地に住む人ならではの理由があった>
北アイルランドの首府ベルファストで、「オレンジメンズ・デー」と呼ばれる7月12日に行われたパレードの動画がツイッターに投稿され、話題となっている。そこに映っているのは、パレードで演奏していたマーチングバンドに向かって、ひとりの男性がゴミ箱を投げつけている様子だ。
■【動画はこちら】マーチングバンドに向かい、突然ゴミ箱を投げつける男性
Aoife (@efaakelly)が投稿したこの動画は、再生回数が1200万回を超えている。また、これをきっかけにツイッター上では、オレンジ結社(the Orange Order)と毎年恒例のパレードに関する熱い議論が巻き起こっている。では、オレンジ結社とは何なのか。
オレンジ結社とは、北アイルランドに住むプロテスタントたちの政治団体だ。名前の由来は「オレンジ公ウィリアム」(1689年にイングランド王ウィリアム3世となった人物)で、結成されたのは1795年だった。
BBCによると、オレンジ公は1690年にイングランド軍を率いてボイン川の戦いに臨み、アイルランド軍を率いたカトリック教徒のジェームズ2世を破ったとされている。オレンジ結社は、カトリックを打ち負かしたことを記念して、毎年7月12日をオレンジメンズ・デーと名づけ、北アイルランド各地でパレードを開催している。
このパレードの目的は楽しく盛り上がることではあるのだが、この地域で現在まで続くプロテスタント系とカトリック系の長く複雑な歴史から、何かと緊張が高まる時期でもある。
アメリカの「アトランティック」誌は、こう解説している。「多くのプロテスタントにとって、このパレードは大切な伝統行事だ。彼らの文化、歴史、価値観そのものであり、1年で最も盛り上がる日でもある」「しかし、北アイルランドに住むカトリック信者にとっては、7月12日のパレードは、祝日どころか挑発だ。(中略)自宅前をパレードが通り過ぎるときには、歓声を上げるよりも、抗議の意を示す人も多い」
今年は近年で最も平和なパレードだった
同誌によると、過去に行われた多くのパレードでは、対立や暴動も起きてきたという。しかしBBCによると、「今年の7月12日は、近年を振り返ってみても、最も安全で平和にパレードが行われたうちに入る」という。それでも、何も起きなかったわけではない。
Aoifeが投稿した動画を見ると、1人の男性が玄関から現れ、家の前にあったゴミ箱を抱えると、前を通り過ぎようとしているマーチングバンドに向かってそれを投げつけているのがわかる。この男性はカトリック教徒に違いないというのが、ツイッターの大方の意見だ。