最新記事

新幹線

日本の新幹線方式の米計画、困難続きの計画が、実現に向け一歩前進

2022年7月8日(金)19時30分
青葉やまと

日本の新幹線方式採用のテキサス高速鉄道計画 Fox26-YouTube

<沿線住民が根強く反対しており、用地取得問題と資金難による計画頓挫も囁かれていた......>

日本の新幹線方式を採用する米テキサスの高速鉄道計画が、建設へ向けて大きく前進した。テキサス州最高裁判所は6月26日、事業主体であるテキサス・セントラル社の主張を支持し、新幹線方式の高速鉄道を予定している同社を「鉄道運営会社」として認めた。これにより、懸案だった土地問題について、強制的に有償で購入する権利(土地収用権)が認められた。

約10年前から計画されている同プロジェクトには一部沿線住民が根強く反対しており、用地取得問題と資金難による計画頓挫も囁かれていた。同社に対する訴訟の原告となった住民男性は、高速鉄道は速すぎるため、既存法が想定する鉄道を逸脱していると主張していた。テキサス州レオン郡の地方裁判所は2019年にこの主張を認め、テキサス・セントラル社は鉄道事業者ではないとし、同社による土地収容を否定している。

今回この判決が覆ったことで、懸案だった土地取得に弾みがつく見通しだ。路線が完成すれば、現在車で4時間かかっているダラス〜ヒューストン間が1.5時間に短縮され、両都市間の移動を「一変させる」と期待されている。

高速だと「電車」ではない?

同社の土地収用権の無効を訴えていたのは、沿線に600エーカー(東京ドーム約52個分)の土地を所有する住民男性だ。地元ニュースサイト「テキサン」によると原告は、高速鉄道は歴史的に同州交通法が想定してきた「1両編成の路面電車が大通りをゆっくりと走るような形式」にそぐわないとし、同法が認める土地の強制収用権の適用外であると主張していた。

これに対しテキサス・セントラル社など多数派は、「(裁判所は)長きにわたり、条文で認められる限りにおいて、後発技術を含める形で土地収用法などの法令を解釈してきた」と反論していた。判決は5対3の賛成多数でテキサス・セントラル社の主張を認め、同社が鉄道運営事業者であるとの主張を支持した。

レオン郡地裁は2019年に原告の主張を認めたが、2021年の控訴審で覆されている。争いは上級審に持ち越され、州最高裁が今回、控訴審の判断を支持した形だ。州最高裁は高速鉄道が鉄道であるか否かへの言及を避けたが、少なくともテキサス・セントラル社が「都市間電気鉄道会社」に該当すると判断し、土地収用権を認めている。

地方紙のダラス・モーニングニュースによるとテキサス・セントラル社は、「私たちは革新的な高速旅客鉄道の計画を進めており、時間をかけてこの重要な問題を熟考してくれたテキサス州最高裁に感謝しています」との声明を発表した。原告住民側の弁護士は「理解できない」とコメントしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中