日本の新幹線方式の米計画、困難続きの計画が、実現に向け一歩前進
東海道新幹線の車両技術で、東京〜名古屋相当の距離を結ぶ
高速鉄道計画では、テキサス州北部のダラスと南部のヒューストンを結ぶ379キロの路線を予定している。東京〜名古屋間の新幹線の営業キロ数にほぼ相当する長さだ。移動は現在、計画路線とほぼ並走する州間高速道路で約4時間を要するが、鉄道が完成すれば1.5時間にまで短縮される。
米工学ニュースサイトの「ニュー・シビル・エンジニアリング」は、「有名な高速鉄道を運営するJR東海の東海道新幹線のシステムを利用して、最大320キロ毎時というスピードで乗客を目的地に90分以内に運ぶ」と説明し、「両都市間の移動性を一変させるものだ」と期待感を示している。
鉄道ニュースを報じる米拠点の国際サイト「レールウェイ・ジャーナル」は、JR東海による東海道新幹線の技術をベースに車両部分を建造する計画であり、路線の運営にはRenfe(レンフェ)社が指名されていると伝えている。同社はスペインの国営鉄道企業であり、スペインの高速鉄道AVEのほか、世界各地で鉄道事業を展開している。
停滞していた計画、巻き返しなるか
計画は10年以上前に起案されたが、このところは立ち消えを疑う声が出るまでに低迷していた。地元メディアの「ヒューストン・プレス」は、「当初、(計画の)見通しは非常に良好であった」と振り返る。記事によると2008年、CIAおよび米国防総省のアジア担当だったリチャード・ローレス氏は、日本駐留中に新幹線の技術に魅了されたという。氏はJR東海と直談判の末に技術支援を取り付け、テキサス州での高速鉄道建設を目指すテキサス・セントラル社が設立された。
だが、90年代に破綻した過去の計画をなぞるかのように、資金難に見舞われる。計画が減速するにつれ、すでに買収した土地の固定資産税が重荷となった。今年6月中旬には前CEOが辞任し、プロジェクト解散の噂が流れるようになっていた。
高速鉄道は中間駅1つを含め3駅が建設される見込みで、2026年頃の開業を予定している。長時間の運転に縛られず、列車内でも仕事をこなせるようになるほか、新駅周辺の活性化や温暖化ガスの排出削減などに期待する声も多いようだ。まだ資金面での問題が残るものの、今回の裁定を受け、計画の実現に弾みがつきそうだ。