最新記事

スリランカ

スリランカ、ガソリンほぼ尽きる 給油所に人の波...3日並んだ運転手も

2022年7月1日(金)18時00分
青葉やまと

ガソリンの国内在庫が払底したスリランカ、燃料を求める人々で給油所は大混乱となった Twitter

<スタンドにバイクが押し寄せ、タクシー運転手は「もう3日並んでいる」と嘆く。政府はその後、異例の全面販売停止に踏み切った>

経済破綻寸前のスリランカで、ガソリンおよびディーゼル燃料の輸入資金が不足している。これにより国内の在庫がほぼ払底した。燃料を求める人々で給油所は大混乱となった。

スリランカのニュースサイト「ニュースワイヤー」は、「燃料危機」が発生していると報じ、ガソリンスタンドに波のように押し寄せるバイクの様子を公開した。

映像では、無数のバイクがほぼ隙間なくガソリンスタンドを埋め尽くしている。供給が限られているとみられ、列が前進している様子はほとんど確認できない。バイクは給油所の施設外にまで連なり、道路と思われるスペースにまで溢れ出している。

限られた燃料をめぐり、軍関係者と警察のあいだで暴力事件も発生した。ニュースワイヤーは6月23日、山間部ワラカポラの給油所で夜間、監視カメラに記録された一幕を公開した。

映像では軍関係者と警官が睨み合い、一触即発の気配を漂わせている。警察官が軍官を指差しながら近寄ると、軍官は警官に突如平手打ちを喰らわせ、複数回にわたり殴りはじめた。止めに入った観衆を巻き込む混乱の末、同警官は士官を逮捕している。

燃料危機に伴い、ガソリンの窃盗が深刻な問題となった。首都スリジャヤワルダナプラコッテでは、近隣に駐車された車両をねらい燃料の抜き取りを繰り返していたとして、窃盗団の三輪自動車が電柱に吊るされた。近隣住民が捕らえ、見せしめのためクレーン車で吊り上げたという。

1割値上げでも供給追いつかず 異例の販売停止

燃料価格は高騰を続けている。政府は6月26日午前2時、ガソリンおよびディーゼルの公定価格を一斉に引き上げた。レギュラー・ガソリンは一挙に1割以上に相当する50ルピー(約19円)の値上げとなり、以後は470ルピー(約177円)で販売される。

日本の価格をやや上回る程度の水準だが、平均年収が日本のおよそ7分の1という現地で、生活への影響は甚大だ。入荷の停滞も深刻となっている。日雇でタクシー運転手をしているという現地男性は、スリランカのBBCシンハラ局に対し、「もう3日間も列に並んでいますが、いつ給油できるかはわかりません」と語った。

値上げ後も在庫が減り続けたため、政府は2日後、一般市民への燃料販売の中止に踏み切った。英BBCは、「スリランカは、一般市民への燃料販売の停止という強烈な手段をとった初めての国である」と述べ、異例の事態だと指摘した。

燃料の購入は、公共交通や医療機関などの社会インフラ部門に限り、引き続き許可されている。ただし、燃料不足を受けて医療スタッフが通勤できず、一部病院では関係者の出勤率が急低下している状態だ。

>>■■【動画】スリランカ、無数のバイクがガソリンスタンドを埋め尽くす■■

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中