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生物時速100キロ以上、摂氏4400度のプラズマ衝撃波を放つテッポウエビの驚異
テッポウエビのはさみはプラズマと衝撃波を生成する...... Image credits: Oxford Museum of Natural History
<テッポウエビの巨大なはさみから発生した気泡は、時速100キロ以上の速さで獲物に向けて放出され、銃声よりも大きな約218デシベルの音が1秒程度鳴る。テッポウエビのはさみや殻に関する様々な研究が行われてきた......>
テッポウエビは体長約4センチ、体重25グラムの十脚目テッポウエビ科に属するエビの一種である。体の半分くらいの巨大なはさみ(鉗脚)を持つのが特徴だ。
このはさみは、獲物を撃って無力化する銃のような機能を果たす。はさみの上部を開くと曲がった小さなスペースに水が入り込み、勢いよく閉じると圧力がかかって水が噴射される仕組みだ。これによって発生した気泡は時速100キロ以上の速さで獲物に向けて放出され、銃声よりも大きな約218デシベルの音が1秒程度鳴る。
また、気泡が弾けると、溶岩の温度の約4倍にあたる摂氏4427度の熱も発生する。この熱は狙った獲物にだけ影響を与え、すぐに消散する。
テッポウエビを模倣し、水中でプラズマを生成する手法を考案
このはさみは長い年月をかけて進化したものと考えられている。加アルバータ大学の研究チームがエビ114種について調査した2017年12月の研究論文では、テッポウエビのはさみの進化に約1億5000万年を要したことが示されている。
これまでテッポウエビのはさみに関する様々な研究が行われてきた。米テキサスA&M大学の研究チームが2019年3月に発表した研究論文では、テッポウエビのはさみの動きを模倣し、水中でプラズマを生成する新たな手法が考案されている。
研究チームは、テッポウエビのはさみがプラズマと衝撃波を生成することに着想を得、テッポウエビの脱皮後の殻をもとに実物の5倍の3Dモデルを作成し、物理的形状だけでなく、プラズマを発生させる複雑なメカニズムも再現した。このメカニズムは水の殺菌や掘削など、幅広い分野で応用できる可能性があるという。
衝撃波から自らを防御しているのかを解明
米サウスカロライナ大学の研究チームは、テッポウエビのはさみが放つ衝撃波から自らをどのように防御しているのかを解明し、2022年7月5日、学術雑誌「カレントバイオロジー」で研究論文を発表した。
これによると、眼球を覆うヘルメット状の器官が水を閉じ込めて、衝撃波を受けると小さな穴から水を排出することで衝撃波を弱らせ、爆風に起因する神経外傷を緩和していることが明らかとなっている。
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