戦地でも避難所でも「歓喜の声」 W杯予選ウクライナ勝利が「2時間の幸福」を生んだ
Zelensky Says Soccer Victory Offers Ukrainians 'Two Hours of Happiness'
シェルター内でウクライナ対スコットランドの試合を見るウクライナ領土防衛隊の兵士(6月1日) Vitalii Hnidyi-REUTERS
<サッカーW杯予選でウクライナがつかみ取った勝利は、多くの国民を勇気づけるとともに、ひとときだけ戦争のつらさを忘れる時間をくれた>
6月1日、FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ(W杯)カタール大会欧州予選プレーオフA組準決勝で、ウクライナ代表チームが、スコットランドを3-1で破った。もともとは3月に予定されていたこの試合は、2月24日にロシアがウクライナへの全面的な侵攻を開始した影響で延期されていた。
この結果を受け、現在も続く戦争の指揮をとるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はSNSに、この勝利はウクライナ人に「2時間の幸福を......、わが軍と国全体に喜びを与えてくれた」というメッセージを書きこんだ。もちろんウクライナ国民たちは、国内にいるか国外にいるかを問わず、このスポーツイベントを単なる試合以上のものと捉えていた。
ニューズウィークは、ジョージアのトビリシにある自由広場にほど近い居酒屋で取材を行った。同店のボックス席で自国チームを応援していたキエフ生まれのジェニアとロマンは、試合終了のホイッスルが鳴ったあと、「この勝利は特別なものだ」と語った。
「これは普通の試合ではない」と、ジェニアは話した。「兵士たちが塹壕のなかにいて、国を守るために文字どおりすべてを捧げているときには、サッカーのユニフォームを着た人たちにも、同じくらいの努力を示して、力を注ぐ義務がある。彼らはまさにそれをやり遂げた。本当に勇気づけられた」
試合が始まるとロシア軍がロケット弾を撃ち始めた
従軍中のウクライナ軍の兵士たちも、同じように勇気づけられた。「この勝利はわれわれ全員に、特大の前向きな力を与えてくれた」。オデッサ地域にいる「領土防衛隊」の兵士、アレクサンドル・ベスパリイはニューズウィークにそう語った。
「われわれはプロジェクターを使って観戦する計画だったが、試合の最初から、オークの連中(ロシア軍)がウクライナ中でロケット弾を撃ち始めたから、塹壕に下りて、スマートフォンで観戦しなければならなかった」
「前線の兵士たちも、きっと見ていたはずだ」とベスパリイは続けた。「少なくとも、そのとき直接交戦していなかった兵士たちは」
ベスパリイのきょうだいであるアンナも観戦していた。ただしその場所は、3月にキエフから避難し、パートナーとともに借りている、比較的安全なウクライナ西部の小さなコテージだ。
「普段、サッカーは見ない」と、アンナは取材に答えた。「でも、ウクライナを応援したかった。試合はとても緊迫していて、試合中ずっと、パートナーの手を強く握っていた。すごく緊張していたから」