戦地でも避難所でも「歓喜の声」 W杯予選ウクライナ勝利が「2時間の幸福」を生んだ
Zelensky Says Soccer Victory Offers Ukrainians 'Two Hours of Happiness'
「わが国の選手たちは、戦争のせいで十分な練習をする機会がなかったと聞いた」とアンナは続けた。「でも、ウクライナ人にとって、ひとつの勝利にどれほどの意味があるのか、選手ひとりひとりがよくわかっていたにちがいない。この気持ちを自分が必要としていたことがわかった」
とはいえ、この試合でアンナが完全に救われたわけではない。「ハーフタイム中にニュースサイトに行ったら、ロシア軍の砲弾が私の故郷ミコライフの住宅街を直撃する恐ろしい動画が目に入った」とアンナは話した。「そのあとの15分は呆然としていたが、後半が始まると、少なくとも試合の緊張感にまた切り替えることができた」
「絶対に負けられなかった」
一方、現在の戦争が始まる数年前からモスクワに移り住んでいた熱烈なサッカーファン、パベルは、「われわれのチームは、なんとしても負けられなかった」と語った。「彼らは、殺されたすべての子どもたちのために、そして力尽きたすべての兵士のためにプレーしていた」
「同時に彼らは、ほんのしばらくのあいだではあっても、すべてが『平穏』であるかのように感じる時間も与えてくれた」とパベルは続けた。「戦争のニュースを絶えず追うのではなく、サッカーだけをひたすら見ていたのは、ここ3か月で初めてだ。それは贈りものだった」
ウクライナのオレクシー・ホンチャレンコ(Oleksiy Honcharenko)議員は、この3-1での勝利が持つ、さらに大きな意味を指摘している。「『戦争が続いているときに、サッカーがなんの役に立つ?』と訊く人もいるかもしれない。だが、こうした状況にあってもなお、すべての人にはやるべき仕事がある」と、彼は本誌に語った。
「軍は戦う。サッカー選手は試合をする。そして今日、われわれの選手たちは、自分の仕事をすることで、何百万人ものファンに幸せと喜びのひとつの手段を与えてくれた。ウクライナは勝利を必要としていた。わが国の選手はわれわれに、そう、われわれは勝てる、きっと勝つということを示してくれた」
ウクライナは6月5日、W杯出場を懸けてウェールズと対戦する。その試合の勝者は、11月21日のFIFA W杯グループステージ戦、アメリカと対戦する。
(翻訳:ガリレオ)