戦争、インフレ、食糧不足......戦後最大の世界経済危機が迫っている
DIVIDED AND POWERLESS
ジョー・バイデン米大統領は小異を捨てて大同に就く方針で、各国と広範な協力体制を築こうと努力している。EUとは、輸出規制やデータ共有、戦略的に重要な技術の保護強化などの問題で協調できるよう、難しい調整を続けている。
5月に訪日したバイデン大統領は日本や韓国、インドを含む新しいインド太平洋経済枠組み(IPEF)を立ち上げた。まだ詳細は明らかでないが、この枠組みはデジタル貿易や脱炭素化、税制調整などで協力促進を目指している。
6月上旬にはロサンゼルスで米州機構(OAS)首脳会議(米州サミット)を開き、同様な議題を盛り込んだ「経済繁栄のための米州パートナーシップ構想」を発表した。
ただしこの会議には、ブラジルに次ぐ中南米第2の経済大国メキシコが出席していなかった。同国のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、バイデン政権がキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを排除したため会議をボイコットした。
だが、こうした創意工夫を凝らした取り組みも、現下の危機に対応するには不十分だ。これまでの危機では、世界の主要国政府はそれぞれの相違点を乗り越えた上で、しっかりとした対応策を打ち出すことができた。
だが今回は、そうした動きが全く見られない。こうした協力関係の崩壊は、今回の一連の危機がもたらした最も永続的かつ憂慮すべき影響かもしれない。
これまでのところ、一連の混乱が世界貿易全体に大きな打撃を与えた様子はない。食糧やエネルギーなどの分野は混乱しているが、昨年の貿易額は記録的な水準に達していた(ただし今年は減少している)。
だが今回の危機で、世界の主要経済国が抱いていた確信は崩れた。それまでは、互いにどんな相違があろうと、経済成長と安定を最重要視する点で一致し、目標達成のために可能な限り協力できると信じていられた。
しかし今回は、舵取り役がどこにもいない。
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