「島唄」が僕の人生を導いてくれた──宮沢和史(元THE BOOM)が語る沖縄と音楽
FOR FUTURE GENERATIONS
僕がいま一番危惧しているのは、沖縄民謡の聴衆が減少してしまうこと。伝統芸能は全て沖縄の言葉で語られているが、今その言葉を日常的に使っている人は数%で、今後さらに減っていくことは目に見えている。言葉が分からなければ、だんだん興味は湧かなくなる。
だから、少なくとも芸能の中には美しい琉球の、沖縄の言葉が残されているのが、僕の描く未来像。今年5月には琉球弧の島々の唄い手による民謡公演を開いた。字幕を付けて言葉が分からなくても楽しめるようにして。そうやって沖縄民謡の若いリスナーを増やすのが今の目標だ。
僕の根幹にあるのは、沖縄の人が好きだという想い。気さくで包容力があり、歌や踊りが大好き。沖縄は何度も歴史の荒波を乗り越え、その苦難を美しい伝統芸能に昇華させてきた。その精神性、魂の美しさに魅(ひ)かれるのだろう。凄惨な地上戦があったこの島で「どうしたらここまで美しい芸能を磨けるのか」という問いを、一生かけても解明したい。そういう意味でも、「島唄」は僕の人生を導いてくれている。
(構成・知久敏之)
宮沢和史(ミュージシャン)
1966年、山梨県甲府市生まれ。ロックバンド「THE BOOM」のボーカルとして89年にデビュー。92年にリリースした「島唄」が全国で約200万枚のヒットとなる。現在は沖縄民謡を次世代に継承する活動に力を入れている。
<お知らせ>
宮沢和史氏が監修する沖縄民謡アーカイブ『唄方(うたかた)』のプロジェクトが、増刷の製作にあたってクラウドファンディング支援を募集しています。詳しくはこちらをご覧ください。

アマゾンに飛びます
2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら