最新記事

韓国

韓国で外食費の高騰「ランチフレーション」が問題に 冷麺が参鶏湯より高くなる!?

2022年6月22日(水)16時40分
佐々木和義

韓国で外食費の高騰が問題となっている...... REUTERS/Kim Hong-Ji

<文在寅政権が発足した5年前と比べて外食費が、25パーセントから30パーセント上昇した......>

韓国消費者院によると、2022年5月のソウル市内の冷麺1杯の平均価格は1万269ウォンで、5年前と比べて29パーセント上昇した。1杯1万7000ウォンの店もあり、韓国毎日経済は本格的な夏を前に、冷麺が夏バテ料理の参鶏湯より高額になる可能性を示唆している。

ソウルで1万ウォンを超えるランチは珍しくなく、ランチとインフレーションを組み合わせた「ランチフレーション」という新造語が誕生した。

外食費は文在寅政権が発足した5年前と比べて25パーセントから30パーセント上昇した。国際通貨基金IMFによる同期間の消費者物価指数は9.1パーセントの上昇で、外食費の高騰が際立っている。

食に対する安全意識の高まりと共に外食費は上昇

韓国の勤労所得に非課税食費がある。会社が従業員に昼食費を支給すると従業員1人当たり月10万ウォンまで非課税となる制度で、社員食堂やオフィスビルの食堂は月10万ウォンを目安に価格設定を行ってきた。

外食費は、食に対する安全意識の高まりと共に上昇した。2008年の米国産牛肉の狂牛病や2011年の東日本大震災に伴う福島原発の放射能漏れで韓国産食材を求める国産信奉者が増え、また、食事客が食べ残したキムチなど、おかずの使い回しも問題となった。安全を強調する割高な飲食店が登場すると、他の飲食店も便乗値上げを行った。

韓国はカード払いが一般的だ。現金なら値上げに気づくが、カードで支払う韓国人の多くは、多少、値段が上がっても気づかない。

朴槿恵政権末期の2017年、サラリーマンの昼食は6000ウォンから7000ウォンに上昇したが、6000ウォンの昼食を食べた後、4000ウォンから5000ウォンのコーヒーを飲むのがトレンドになるなど、値上げを気にする人はほとんどいなかった。

文在寅前政権の最低賃金大幅引き上げから

2017年5月に文在寅前政権が発足すると急騰する。文政権は時給6470ウォンだった最低賃金を任期末の2022年までに1万ウォンに引き上げる公約を掲げて、就任2年目の18年には16.4%増の7530ウォン、19年には8350ウォンに引き上げた。

最低賃金の大幅な引き上げが飲食店の経営を圧迫した。一般に韓国の飲食店の人件費は料理人が最も高く、ホールスタッフは多くが最低賃金水準だ。ホールスタッフの時給が上がると料理人らも賃上げを要求、飲食店は急騰した人件費を価格に転嫁した。

次いで不動産価格が高騰した。文政権が不動産関連税を引き上げると地価が上昇し、家賃負担が増えたのだ。

人件費と地代の高騰にコロナ・パンデミックが追い討ちをかける。国際輸送費が上昇し、輸入価格が急騰した。輸入価格の急騰は多くの分野に波及した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中