沖縄の少女たちの経験は日本の若い女性に起きているさまざまなことの濃縮版
LIVING WITH DESPAIR
5歳の子に地位協定があるから諦めろという、むごい説明をしている、それが沖縄なのだと思います。
保護施設「おにわ」を造ったのは調査の中で、ほかのシェルター内での暴力や寄付金詐欺について何件も相談に乗ったことがきっかけです。未成年の子を保護したり、弁護団をつくって動く1年間があって、ある時、もう嫌だ、自分で保護施設を造ろうと思った。調査で10代の妊婦が公園で寝泊まりしている話を聞いていたので、そうした子たちのための施設にしよう、と。琉球大学の医学部病院、共同代表の本村真教授(人文社会学部)など本当に優れた人たちと一緒に活動していますが、本来は民間でやるべき事業ではない。今後は少しずつ行政に入ってもらう予定ですが、ここに沖縄の母子支援行政の遅れが表れていると思う。
戦後日本では保健師指導で家族計画が教えられたが、米軍支配下の沖縄ではそれができなかった。だから女性たちは避妊法を知らず、闇人工妊娠中絶が横行し、長男ができるまで産み続ける感じだった。復帰が遅れるってこういうことです。沖縄では今も、女性が妊娠・出産を自分たちの手にできていない気がします。
「おにわ」では、日常の中で女の子たちが「自分で決めていい」というのを大事にしている。その延長線上に性的同意の話があり、生殖の自己決定権もあると思っています。
(構成・大橋 希)
上間陽子(琉球大学教育学研究科教授)
90年代から未成年の少女たちの聞き取り調査・支援を行う。著書に、沖縄での調査に基づく『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』、エッセー集『海をあげる』など。若年出産シングルマザー保護施設「おにわ」の共同代表も務める
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