「高学歴者は自分を見下している」──典型的なトランプ支持者の弟に伝えたいこと
“I Want My Brother Back”
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短い期間に姉弟の関係はすっかり変わってしまったと語る筆者 CARMEN PRESTI
<温厚だった弟は熱烈なトランプ支持者になり、私をイデオロギー上の敵と見なすようになった。アメリカにはびこる、反知性主義について。そして、今こそ対話が必要なこととは?>
3歳下の弟と私は、米フロリダ州マイアミ市のキューバ系移民の家庭で育った。ずいぶんけんかもしたけれど、大人になって家庭を持ってからは家族ぐるみで親しく付き合い、一緒に休日を過ごすことも多かった。意見が一致しないことがあっても、互いへの敬意と愛情を失うことは決してなかった。
ところが、とても短い期間で私たちの関係はすっかり変わってしまった。
弟は温厚な性格で、政治にあまり関心を示さなかったが、2016年を境にドナルド・トランプの熱烈な支持者に変わった。大きなトランプの旗を飾ったり、トランプのTシャツを着たり、携帯電話の着信音をトランプの声にしたり。
一方の私は、10代の頃から筋金入りのリベラル派。共和党支持の保守派が多い家族と意見が合わないのは今に始まったことではないが、口論になることはなかった。
しばらく前の家族の集まりで、新型コロナワクチンの接種率をめぐる議論になった。看護師としてコロナ病棟で働く私は、支持政党によって接種率に大きな差があることを指摘し、コロナの悲劇から身を守るためにも、もっと多くの人に接種を受けてほしいと言った。
すると弟は、支持政党による接種率の違いなどないと言い、私がデータをでっち上げていると反論した。さらに、私が受けてきた教育をあざ笑い、私がこの2年余りの間、数々の悲しい症例を目の当たりにして心を痛めていることまで物笑いにした。その攻撃的な姿勢は、子供の頃に戻ったかのようだった。
学歴をめぐる憎悪の感情
それから数カ月。弟から謝罪の言葉はまだなく、それ以降、私たちは言葉を交わしていない。憎しみにゆがんだ弟の顔が今でも目に浮かぶ。
どうして、弟は変わってしまったのか。1つ思い当たることがある。あの晩、私にかみついたとき、弟はしきりに学歴にこだわっていた。
弟に言わせれば、5人きょうだいで1人だけ大学に進学し、大学院でも学んだ私が学歴を理由に弟たちを見下しているというのだ。私自身は、たたき上げの技術者として成功している弟のことをずっと誇りに思ってきたのだが。
このような学歴をめぐる怒りの感情は、右派に典型的な態度だ。右派の人たちはしばしば、左派の人間が尊大なエリートだと批判する。