中朝露「核使用も選択肢」連合の暴挙に備えよ
Ex-Generals See Nuclear Blackmail 'Trinity' in Russia, China, North Korea
北朝鮮のミサイル発射実験を報じる街頭テレビ(5月25日、韓国ソウル) Kim Hong-Ji-REUTERS
<北朝鮮が初めての核実験を行った2016年以来、中露は今年初めて対北制裁案に拒否権を発動した。ウクライナ侵攻の際の戦術核の脅しと同様、これは危険な兆候だ>
米空軍の元将官が6月18日、ロシアと中国、北朝鮮の3カ国がそろって核兵器による脅迫を行っており、アメリカはそれにいかに対処するか「真剣に」検討しなければならないと指摘する報告書を発表した。
米空軍のハワード・トンプソン元少将とダン・リーフ元中将は安全保障問題専門サイト「リアルクリアディフェンス」で発表した報告書の中で「もっとも重大な問題は、核ドクトリンにおいて脅迫が当たり前のことになっているかも知れないという点だ。このアプローチは、大国つまりアメリカとソ連、中国が核攻撃を本当に最後の手段だと捉えていた『相互確証破壊(MAD)』の考え方とは対照的だ」と指摘した。
MADとは、核による先制攻撃を受けた場合に相手国にも甚大な被害を与えうる核による反撃能力を持つことで核抑止とするという考え方。
CNNによれば中国とロシアは5月、朝鮮が初の核実験を行った2006年10月以来初めて、国連安全保障理事会において北朝鮮に対する制裁強化案に拒否権を行使した。その北朝鮮は今年に入り、弾道ミサイルの発射実験を繰り返している。
「(中露の)北朝鮮制裁案に対する拒否権行使が示すのは、限定的な核攻撃を行うという脅迫や、その実行によって世界秩序を危険にさらすことを意図しているかもしれない邪悪な3国連合が姿を現したということだ」と元中将らは主張している。
対北朝鮮の制裁決議への対応に変化
北朝鮮が初の核実験を行った06年10月には、中露を含む国連安保理はすぐに北朝鮮を非難し制裁を科す決議を行った点を報告書は指摘した。それ以降も中露両国は対北朝鮮制裁案すべてを支持してきた。
「今回の拒否権は危険だ。これらの常任理事国(中露)は、自国も関わってきた安保理のこれまでの行動のみならず、われわれの集団的な安全保障にも悪影響を及ぼす立場を取った」と、アメリカのリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は先月、日米韓を代表した声明で述べている。
従来の専門家の見方では、北朝鮮が今年に入ってミサイル発射実験を連続して行っているのは、バイデン政権に圧力をかけ、アメリカによる制裁の見直しを求める狙いがあるとの見方もあった。だがそれだけではない、というのだ。
ハワードとリーフは報告書の中で、今年4月の英フィナンシャル・タイムズの記事を引用した。安全保障問題に詳しいハーバード大学のグレアム・アリソン教授はこの記事で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナでの敗北を認めるか、「破壊のレベルを引き上げる」かの二者択一を迫られた場合、後者を選ぶと「信じるに足るあらゆる理由」があると述べた。