ジョニー・デップ裁判で証言した私が体感した彼の本質

'I Testified in the Heard vs. Depp Trial. The Backlash Has Been Horrific'

2022年6月9日(木)18時59分
デービッド・スピーゲル(精神科医)

家のブラインドを閉め切るほどの疑心暗鬼には陥っていなかったと思う。だが長女はまだバージニア州の自宅で暮らしていて、馬鹿げた考え方に思えるかもしれないが、うちはピットブルを飼っている。彼女は素晴らしい犬だが、それでも本質は闘争心の強いピットブルのままだ。私はこの時、おそらく人生で初めて「ピットブルを飼っていてよかった」と思った。彼女が娘の側にいてくれてよかったと。うちの犬が誰かを傷つけることはないと思うが、相手を怖がらせる存在にはなるはずだから。

ジョニー・デップには、先回りして(ファンたちに)こう言って欲しかった。「みんなが怒っているのは分かる。でも怒りを表現する方法は選ぶべきだ」と。彼がそうしなかったという事実が、彼の本質を物語っているのかもしれない。ハード氏も表に出て声を上げてはいないが、彼女はこの状況において、最も弱い立場にある人物だと私は考えている。もし私に熱心な支持者集団がいて、彼らが見ず知らずの誰かに嫌がらせをしているのを知ったら、裁判の時と同じことを言うだろう。不満を表現する方法は選ぶべきだし、表に出さない方法だって幾つもあると。

ヒーローの本性は誰も知らない

デップはファンたちの言動に気づいた時点で、彼らの感情を別の方向に向けさせるべきだったと思う。今からでも彼が介入してくれるなら歓迎するが、一方で彼に有利な評決が下されたことで、ファンの怒りも和らぐかもしれないと思っている。だが評決が下された後も、私の仕事先には誹謗中傷のメールが届いたし、失礼な電話も1件かかってきた(スタッフがうまく対処してくれたが)。

私は5月23日以降、ほぼ完全にオフラインの生活を送っている。裁判の前には妻と子どもたちにも、少なくとも裁判の1週間前から2週間後までは、自分のウェブサイトやソーシャルメディア・プラットフォームから離れるように言った。それでも家族にとって、そして私が長年つき合ってきた患者たちにとって、今も私に対する攻撃があるのを見るのは、少しつらいことかもしれない。

ヒーローやスターを選ぶ際、私たちが知っているのは彼らの「表の顔」であり、中身ではないということを忘れてはならないと思う。だからこそ、家族や教師などの身近な人物を自分のヒーローに選ぶ方がいい。話したこともない他人よりも、よく知っている人々だからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中