ジョニー・デップ裁判で証言した私が体感した彼の本質
'I Testified in the Heard vs. Depp Trial. The Backlash Has Been Horrific'
ホテルに戻り、1時間程経ったとき、午後4時頃だったろうか、妻から電話があった。「テレビもネットも見ないほうがいいわ。あなたがどう言われているか、知らないほうがいい」
「そんなに酷いのか」と聞くと、妻は「ええ、まあ」と言葉を濁した。私はSNSに疎いので、証言後にこれほど激しいバッシングを浴びることは予想していなかった。だから最初は、ただただ面食らった。
自分がどんな人間で、どんな様子で、どんな顔をして、どんなことを言ったか。いわれのない個人攻撃をどっと浴びせられて、平然としていられる人はまずいないだろう。私は職業柄いろんな人に接している。感情的な言動に対しても、冷静に対応するよう習慣付けられている。精神科医はみんなそうだ。
だが自分が映ったYouTube動画に付けられた膨大なコメントを見たときは、さすがにたじろいだ。どこで知ったのか、私が仕事で使っているメールアドレスをかぎつけ、脅迫めいたメッセージを送ってくる人もいた。
医療サイト「ウェブMD」の私のページは現在、コメントできなくなっている。以前はせいぜい7、8件のコメントが付く程度だったが、5月23日と翌24日に急増した。その数字を見れば、何が起きたか一目瞭然だ。
感情的な脳震盪に
私もいい年なので、他人に批判されたことぐらいはある。だが、こんなに大勢の見知らぬ人たちから一斉に罵詈雑言を浴びせられたのは、これが初めてだ。証言後の2日間で、私はいわば感情的な脳震盪を起こした。頭を打ったわけではないが、感情的に衝撃を受け、頭がクラクラして、目の前が暗くなった。まる1日以上、ただこんこんと眠り続けた。
5月25日から休暇を取って、ニューヨークに住む息子と会い、31日にバージニア州の自宅に帰る予定だったが、この奇妙な脳震盪のために休暇を1日繰り上げることになった。幸い、家族が支えてくれたし、患者も私の心情を気遣ってメールを送ってくれた。ありがたいことに研修医や同僚たちもテキストメッセージを寄せてくれ、「私たちはドクター・スピーゲルの味方だ」と書いたTシャツまで作ってくれた。身近な人たちの優しさにどれだけ救われたか、とても言葉にはできない。
職業柄、精神障害で無罪になった殺人犯にも接してきたし、患者に「殺してやる」と脅されたことも1度ならずある。そんなことではビクともしないが、今回はさすがに参った。たった1人でも歪んだ物の見方をする人がいるだけで、ここまで騒ぎは広がるのか、と。