ジョニー・デップ裁判で証言した私が体感した彼の本質
'I Testified in the Heard vs. Depp Trial. The Backlash Has Been Horrific'
デップからDVを受けたと言う元妻ハード(左)を名誉毀損で訴えたデップ Jim Lo Scalzo/REUTERS
<アンバー・ハード側の証人として証言をした私は激しいバッシングを浴び、ジョニー・デップはファンのそうした行動を止めようともしなかった>
ジョニー・デップが元妻のアンバー・ハードを名誉毀損で訴えた裁判は6月1日に評決が下り、デップが勝訴したことを私はニュースで知った。
何よりもまずミズ・ハードにとっては非常に残念な結果だった。この裁判で、彼女が受けた支援はとうてい十分とは言えない。
私は30年の臨床経験を持つ精神科医で、医療過誤をめぐる裁判でも専門家として証言したことはあるが、メディアが大々的に取り上げるような裁判で証言を行なうのはこれが初めてだった。
ハード側の弁護団に専門家として証言するよう求められたのは、この裁判が始まった2019年で、およそ3年関わってきたことになり、その間に法廷で争われた事柄は知り抜いている。
証人になることを引き受けた段階では、この裁判は非公開で行われると思っていた。TVカメラもファンも法廷内には入れない。裁判所の外にはパパラッチがいるが、その程度のことなら大したことはない、と。
ハードは礼儀正しい女性
だが裁判の様子がテレビで全米に伝えられるようになると、にわかに雲行きが変わった。それでも証人を引き受けた以上、自分の務めを粛々と果たすのみ──そう自分に言い聞かせていた。
裁判の前に、私はオンライン会議アプリのズーム(Zoom)でハードに小一時間話を聞いた。証言を行なった5月23日には、休憩時間に彼女と2人でランチをとった。とても感じの良い、物柔らかで礼儀正しい女性という印象を受けた。
証言内容については何も心配してなかった。トラウマと薬物乱用は私の専門だし、裁判で争われた事実についても事前に十分調べていた。とはいえ反対尋問は勝手が違う。相手の出方が分からないので、万全な準備ができない。それでも予想外の質問をされることは覚悟していたが、心配だったのはテレビ報道だ。私の証言は全米に伝えられる。一般の人たちがどんな反応をするか予想もつかなかった。
証言を終えたら、ほかの人たちが証言を行なっている間に退廷するよう言われていた。裁判が続いている間は、傍聴人は席を立てないからだ。そのため裁判所を出るときには、誰も私の車を追いかけてこなかった。