コロナ感染急増の北朝鮮で、新たな「謎の病」が流行 800世帯罹患、患者隔離
ワクチン拒否の北朝鮮
北朝鮮は今回の「深刻な腸の病のエピデミック」以前から、コロナとの厳しい戦いを繰り広げてきた。5月に発熱者の急増を認めて以来、計数百万人という症例者が報告されている。事態を受け北朝鮮政府は一時、非常事態を宣言した。
ワクチンのない北朝鮮では主要なコロナ対策を鎖国政策に頼っているが、その甲斐なく発熱の報告が急増している。世界各国の保健機関は、こうした発熱者の多くが新型コロナ患者だと考えている。北朝鮮は日別感染者数ではなく発熱者数を発表しているが、これは新型コロナ用の十分な検査器具がないことの象徴でもある。
国際社会からはワクチン寄贈の申し出が寄せられているものの、金正恩政権はこれを頑なに拒否してきた。世界保健機関(WHO)などが主導するワクチン公平分配の枠組み「COVAX」は、北朝鮮に繰り返しワクチン支援を打診しているが、北は拒否の姿勢を崩していない。昨年9月に中国がシノバック製ワクチンを申し出た際も、「より必要としている国」に送るようにと述べ、支援を固辞した。
北朝鮮国営メディアは海外での副反応の事例を盛んに報じ、ワクチンの効果に疑問を呈している。支援分だけでは全国民に行き渡らないとみた政府が、ワクチン不要のポーズを国民に提示している可能性がある。
変異株の震源地になるとの懸念
一方、米議会が出資するラジオ局「ラジオ・フリー・アジア」は、北朝鮮でごく一部の国民を対象にワクチン接種が実施されたと報じている。金正恩氏が「不滅の愛の薬」と呼ぶ輸入ワクチンを、国家の建設プロジェクトに従事する兵士たちに限って接種しているという。
だが、国民の大多数への接種は遠い。ワクチンと十分な医療体制のない北朝鮮において、新型コロナの感染は急速に広がるおそれがある。専門家たちは、北朝鮮が新たな変異株の発生源となる事態を懸念している。
ドイツ国営の国際放送局「ドイチェ・ヴェレ」は6月7日、 「北朝鮮が新型コロナのアウトブレイクを抑制したと頑なに主張する一方、限定的なワクチン、未発達な医療機関、国民全般の貧相な健康状態から、国際的な保健機関らは、この孤立した国がウイルスの新たな変異株発生に理想的な環境になるとして憂慮している」と報じた。
衛生水準の低い北朝鮮は、腸に関連したアウトブレイクに幾度となく見舞われてきた。コロナ禍と重なった今回、対応のいっそうの難航が予想される。