コロナ感染急増の北朝鮮で、新たな「謎の病」が流行 800世帯罹患、患者隔離
韓国はこのアウトブレイクへの支援を申し出ているが、北朝鮮側はこれに応じていない...... REUTERS
<詳細不明の腸の疾患が拡大し、金政権が封じ込めに当たっている>
新型コロナウイルスの感染が拡大中の北朝鮮で、コロナとはまた違う「謎の病気」が流行の兆しをみせている。国営メディアの朝鮮中央通信は6月16日以降、平壌の南120キロにある黄海南(ファンヘナム)道の海州(ヘジュ)市において、少なくとも800世帯で「深刻な腸の病のエピデミック」が発生したと報じた。金政権は医師団と疫学調査官を現地に派遣した。
韓国の聯合ニュースによると、病名は特定されていない。北朝鮮の金正恩総書記は「拡大を完全に抑制するため、よく練られた対策によって疑わしい症例者を隔離し、できる限り早い時期に」アウトブレイクを封じ込める必要があるとの認識を示している。この発言から、対策の中心を医療よりも隔離に頼る方針がうかがえる。
聯合ニュースは翌17日、「少なくとも2000人がこの病気に感染している可能性がある」と報じている。また、コロナのまん延と併せ、「ぜい弱な医療体制と恒久的な食糧不足で知られるこの貧しい国において、ウイルスのアウトブレイクによる影響に懸念が広がっている」と指摘した。
北朝鮮は「急性の腸の」アウトブレイクが発生したと発表するのみであり、具体的な病名を公表していない。米国営放送のボイス・オブ・アメリカは、「謎の胃腸の疫病」として報じた。一方、聯合ニュースは、「腸チフス、赤痢、コレラなどの感染症」の可能性があるとみている。こうした疫病は、ウイルスに汚染された食べ物または水の摂取、あるいは感染者の排泄物が主な感染源となる。慢性の下痢、発熱、胃けいれんなどの症状を呈し、適切な治療を受けられない場合は死亡に至るおそれがある。
コロナとの二重の戦い
今後の見通しは厳しい。米CNNは6月19日、「木曜(16日)に初めて報告されたこの新たなアウトブレイクは、長引く食糧不足とコロナ感染者増に見舞われるこの孤立したこの国に、さらなる負荷をかけるものである」と報じ、北朝鮮の厳しい状況を強調した。
ボイス・オブ・アメリカは、「北朝鮮政府は2つの強力な疫病のアウトブレイクに同時に対処するだけのリソースをもたないことが考えられる。そのため、この状況は同政府とって大きな難題となるおそれがある」とみる。韓国はこのアウトブレイクへの支援を申し出ているが、北朝鮮側はこれに応じていない。
北朝鮮保健当局は、「全住民の集中検査」を行うと発表した。当局は同時に、下水およびゴミの消毒に着手している。政府から派遣された「迅速診断治療チーム」が地元当局と連携し、アウトブレイクによって農作業が中断することのないよう対応を図るという。金正恩氏の妹および側近らは、医薬品を現地住民に寄贈した。英サン紙によると北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、地域住民らが「薬を受け取ると泣き崩れた」と報じたという。薬の詳細や、必要とする住民に行き渡ったかどうかは不明だ。