過去10年進展なし、子供が殺されてもアメリカの「銃の自由」は崩れない
An Intractable Problem

一部の州は人目につく形で銃を持ち歩く「オープンキャリー」を認めている ERICH SCHLEGEL/GETTY IMAGES
<2012年のオバマ演説、今回のバイデン演説......。どれだけ悲劇が繰り返されたら、本格的な銃規制が法制化されるのか>
惨劇はまたも繰り返された。5月24日、米テキサス州ユバルディの小学校で起きた銃乱射で児童ら少なくとも21人が亡くなった。
どうすればこうした悲惨な事件を防げるのか。
この事件が思い出させたのは2012年にコネティカット州のサンディフック小学校で起きた悲劇だ。20歳の容疑者は母親を射殺して現場となった学校に向かい、児童ら26人を射殺。その後自ら命を絶った。
今回の事件でも容疑者は祖母を撃ってから学校に向かったと伝えられている。
サンディフックの銃撃犯、アダム・ランザは母親が合法的に購入した銃を犯行に使用した。報道によれば、今回の事件のサルバドール・ラモス容疑者は18歳になってから合法的に銃を購入したという。
サンディフック事件が起きたとき、当時のバラク・オバマ米大統領は「犠牲になったのは私たちの子供たちだ」と、国民に訴えた。
「今こそ政治的立場を超えてアメリカが一つになり、悲劇を防ぐ有効な措置を取らねばならない」
今回の事件を受けてジョー・バイデン米大統領はこう語った。
「われわれはいつになったら銃業界の圧力をはねのけるのか。なぜこうした虐殺を許しているのか」
ほぼ10年の歳月を経て2人の大統領がほとんど同じメッセージを放ったということは、この10年見るべき進展がなかったことを物語っている。
NPO「ガン・バイオレンス・アーカイブ」によると、この10年ほどの間にアメリカでは銃乱射事件が3500件以上発生。今年だけでも既に214件も起きている。
むごたらしい悲劇が起きるたびに、規制強化を求める声は高まる。
だが銃規制派が議会に法案を提出しても、そのたびに共和党多数派の頑強な抵抗に遭う。規制強化は個人の自由を制限するだけで銃の暴力を防ぐ効果はない──彼らはそう主張して譲らない。
銃が子供の主な死因に
サンディフック事件の翌年、民主党のジョー・マンチン上院議員と共和党のパトリック・トゥーミー上院議員が中心となり、全ての銃器の取引に購入者の身元調査を義務付ける超党派の法案を提出したが、上院で否決された。
2019年にテキサス州エルパソのウォルマートで銃乱射事件が起き、23人が死亡したときにも規制強化のうねりが高まった。このときは州当局も対策の必要性を認めたが、2021年に成立した州法はなんと州内の公共の場での拳銃の携帯に免許は不要とするものだった。