韓国、高騰する子育て費用に出産先送り 卵子凍結サービスが人気に

韓国では子どもを産む女性が減り、たとえ産む意思がある場合でも、出産を後回しにする傾向が強まっている。住居費と子どもの教育費が高騰しており、財政的な余裕を確保することが先決だからだ。写真は、卵子を凍結した公務員のリム・ユンヨンさん(34)。同国のCHAメディカル・センターで4月30日撮影(2022年 ロイター/Heo Ran)
韓国では子どもを産む女性が減り、たとえ産む意思がある場合でも、出産を後回しにする傾向が強まっている。住居費と子どもの教育費が高騰しており、財政的な余裕を確保することが先決だからだ。子どもを産むには結婚する必要がある、という社会的道徳観も立ちはだかっている。
公務員のリム・ユンヨンさん(34)は、家族を持つ準備ができていないと話す。金銭的コストに加え、彼氏と付き合い始めて数カ月しかたっていないことが理由だ。ただ、出産可能年齢の限界に近づくことを懸念し、昨年11月に卵子を凍結した。
韓国最大の不妊治療クリニック、CHAメディカル・センターでは昨年、リムさんを含めて約1200人の未婚女性が卵子を凍結した。過去2年間で、この数は2倍に増加している。
「すごく安心するし、健康な卵子がここに凍結してあると分かっていることで心の平安を得られる」とリムさんは言う。
出生率がOECD加盟国平均の半分に
卵子を凍結して出産のための時間を稼ぐ選択をする女性は、世界中で増えている。しかし韓国は、合計特殊出生率が世界最低に近いという、あまり自慢できない記録を持つ国だ。その韓国においてCHAのサービスの利用が劇的に増えていることは、出産先送りなどの選択につながる経済的負担と社会的な制約を浮き彫りにしている。
合計特殊出生率は、女性が出産可能年齢の間に産む子どもの数の平均値。韓国は昨年0.81人と、経済協力開発機構(OECD)諸国の2020年の平均1.59人を大幅に下回った。
しかもこれは、韓国当局が子どものいる家庭に巨額の補助や手当てを与えているにもかかわらずだ。政府は昨年、出生率を上げるための政策に46兆7000億ウォン(370億ドル)の予算をつぎ込んだ。
韓国国民が子どもを持ちたがらないのは、競争過剰でコストの高い教育制度に大きな原因がある。大半の児童は、小さいころから学習塾に通ったり家庭教師を付けたりするのが当たり前になっている。
「結婚した夫婦の話やテレビのリアリティ番組で、子どもを育てるには教育費などでどれだけお金がかかるかを聞かされている。そういった心配が結婚や出産の減少につながっている」とリムさんは語った。
住居費も急騰している。例えば首都ソウルの平均的なアパートの価格は、韓国の世帯年収の中央値の19倍と、2017年の11倍から急上昇した。