最新記事

ウクライナ

「ウクライナを守る盾」、ロシア艦を撃沈した「ネプチューン」が戦局を変えた

Neptune Anti-Ship Missile May Have Been Weapon That Sank Russian 'Moskva'

2022年5月13日(金)17時45分
ジェイク・トーマス
沈没するモスクワ

@michaelh992/Twitter

<2014年のクリミア併合を受けて開発されたウクライナの国産ミサイルが、ロシアの侵攻に対する防衛戦争で大活躍>

ロシアによる軍事侵攻に激しい抵抗を続けているウクライナ。その「防衛戦」で最も大きな戦果のひとつをもたらし、戦局を有利に変える中心的な役割を果たしたのは、ウクライナ国内で設計・製造された、ある兵器かもしれない。

ウクライナ軍は4月に、ロシア黒海艦隊の旗艦、ミサイル巡洋艦「モスクワ」を沈没させたと宣言した。これは自軍よりはるかに大きな規模を誇るロシア軍に対する、象徴的かつ戦略的に重要な勝利だった。

ロシア政府は「モスクワ」沈没の原因がミサイル攻撃によるものだったとは認めていないが、ウクライナ側がロシアに激しく抵抗する中で、時にロシアにとって予想外の先進兵器を使用してきたのは事実だ。

「モスクワ」への攻撃に使われたのは、対艦ミサイル「ネプチューン」。歴史専門サイトのHistoryNet.comによれば、これは2014年にロシアがクリミア半島を併合したことを受けて、ウクライナが独自に開発した対艦ミサイルだ。

開発を行ったのはウクライナの国家キーウ設計局「ルーチ」で、旧ソ連の対艦ミサイル「Kh-35」に幾つかの改良を加えて、2015年に首都キーウ(キエフ)で行われた兵器見本市「アームズ・アンド・セキュリティ・インターナショナル・エグジビション」で「R-360ネプチューン」としてお披露目された。

同設計局はネプチューンについて、巡洋艦や駆逐艦、戦車揚陸艦をはじめとする艦船などを撃破するために開発された対艦ミサイルだと説明している。


海における「ウクライナを守る盾」

HistoryNet.comによれば、ネプチューンは全長約4.8メートル。ミサイル重量は870キログラムで、弾頭が150キログラムだ。ネプチューンの1個大隊は6両編成の移動式発射装置で、海岸線から最大約25キロメートル離れた地点からの発射が可能。海面上10~15メートルを飛翔することで、敵のレーダーをかいくぐることができる。

キーウ・ポスト紙の報道によれば、ウクライナ海軍の最高指揮官であるオレクシー・ネイジュパパ少将は、2021年3月15日のミサイル納品式典の際、「このシステムは、アゾフ海と黒海でウクライナを防衛するために設計されたものだ」と述べていた。

同紙によればウクライナ海軍は、ロシアの脅威から自国の海岸線を守るために、新たに設けた沿岸防衛専門のミサイル大隊にネプチューンを導入。現在ロシア軍の爆撃を受けている、クリミアに近い黒海沿岸の都市オデーサ(オデッサ)に配備したという。

ネイジュパパは式典の中で「海軍の沿岸ミサイル防衛部隊にとって、今日は歴史的な日だ」と述べ、ネプチューンを「海におけるウクライナのミサイルの盾」と称した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中