最新記事

急性肝炎

子どもに急増する原因不明の急性肝炎、飼い犬と関連?

Mystery Hepatitis Disease Killing Children Might Be Linked To Dogs: CDC

2022年5月10日(火)17時51分
アンドレア・チップマン

発症した子どもの家庭では犬を飼っている割合が比較的高かったが、関連の有無はまだ不明だ shironosov-iStock.

<原因不明の急性肝炎を発症する子どもが相次ぎ、5人が死亡した件で、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)は、飼い犬との関連性について調査中だ>

米保健当局がこれまでに確認した原因不明の急性肝炎の症例は109件。患者は就学前の子どもに集中しており、過去7カ月のあいだに24州と米領プエルトリコで発生した。

CDCの感染症担当副所長ジェイ・バトラーは5月6日の記者会見で、患者の約90%が入院し、14%は肝移植が必要だったことを明らかにした。患者は全員、発症するまでは健康面に何の問題もなかった。

同様の症例は、米国以外でも発生している。世界保健機関(WHO)の発表によると、5月1日現在、同じ急性肝炎だと考えられる症例が20カ国で228件確認されており、その大半は欧州と米国だ(注:厚生労働省によると、日本では6日までに7人、似た症状の患者が報告されている)。

急性肝炎の患者数急増と犬との関連性は、英国保健安全保障庁(UKHSA)が5月6日に発表した報告書で、可能性が示された。

英国では5月3日現在、子どもの急性肝炎が163件報告されている。UKHSAの報告書によれば、今回の急増を説明する仮説として有力なのは、アデノウイルスとの関連性だ。アデノウイルスは広く存在しているウイルスで、通常は軽い風邪やインフルエンザのような症状を引き起こす。

犬を飼っている家庭が

同時に報告書は、ほかの環境要因についても考察している。UKHSAが実施したアンケート調査を再検討した結果、発症した子どもの家庭で犬を飼っている割合が比較的高かったことが判明したという。判明している限りでは、70%の家庭が犬を飼っていた。ただし、英国では犬を飼うのは一般的だという指摘もある。

CDCのバトラーによると、米国で確認された症例の半数以上でも、アデノウイルスの陽性反応が出た。CDCは、犬との接触を含めたありとあらゆる要因について、調査を続けていると話した。

「私たちは、範囲を広げてさまざまな原因を探っている。そして、アデノウイルスの陽性反応に関するデータが、偶然のものなのか、あるいは何らかの他の共通の要因がこれまでにあまり見られなかったかたちでアデノウイルスを発現させたのかについては、先入観を持たないようにして調査を行なっている」とバトラーは述べた。

保健当局によれば、子どもの肝炎リスクは依然として低い水準だ。主な症状としては、嘔吐する、尿の色が濃くなる、便の色が薄くなる、黄疸が出て肌や白目の部分が黄色く変色する、などがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中