最新記事

ウクライナ戦争

中国からあの米同盟国まで ロシアを支持・支援する国は世界人口の半分以上

THE WEST VS. THE REST

2022年5月10日(火)16時55分
アンジェラ・ステント(ブルッキングス研究所シニアフェロー)

220517p22_RSA_01.jpg

プーチン(左)とグテレス国連事務総長の隔たりはあまりに大きい VLADIMIR ASTAPKOVICH-SPUTNIK-KREMLIN-REUTERS

中ロが望む新たな世界秩序

いずれにせよ、ウクライナ侵攻開始以来、中国は一貫してロシアを支持あるいは支援している。国連でのロシア非難決議では棄権した。人権理事会におけるロシアの資格停止決議には反対票を投じた。

ウクライナを「非ナチ化」し、「非武装化」する特別軍事作戦だというロシア側の主張を、中国メディアはある程度まで忠実に繰り返し、紛争の責任はアメリカとNATOにあると非難する。

ロシア軍がウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャで行ったとされる民間人虐殺にも疑問を呈し、独立機関による調査を求めている。

しかし中国の立場も微妙だ。

表向きは一刻も早い停戦を求めているし、ウクライナを含め、全ての国の領土保全と主権尊重の原則を擁護している。

中国はウクライナにとって最大の貿易相手国だ。しかもウクライナは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加しているから、その経済状況が悪化するのは中国にとっても好ましくない。

それでも習は、同じ独裁者であるプーチンと手を組むことを選んだ。

2人とも、アメリカ主導の世界秩序では自分たちの国益が損ねられると不満を抱いている。だから習もプーチンも「ポスト西洋」時代の新たな世界秩序を生み出したい。ただし、その内実に関する両者の思惑は異なっている。

中国が欲しいのは一定のルールに基づく秩序であり、そこで自国が今よりも大きな役割を果たせれば、それでよい。一方でプーチンが望むのは、ほとんどルールのない破壊的な世界秩序だ。

ただし両国とも、自国内の制度や人権問題について西側諸国から批判されるのを嫌う。そしてそれぞれの独裁体制を維持するために互いを必要としている。

だからプーチンのロシアが戦いに敗れることは、習の中国にとって好ましいことではない。

それ故にウクライナにおける戦闘の規模や残虐さから目を背けたくなったとしても、習がロシアを表立って非難するわけにはいかない。

今のところ、中国の主要な金融機関は西側諸国がロシアに科した経済制裁に従っている。結局のところ、中国にとってはロシアよりもヨーロッパやアメリカとの経済的な利害関係のほうが大きいからだ。

それに中国は、自分たちが台湾を侵攻した場合の西側諸国の出方を予想しておきたい。だから今は、制裁の効果を慎重に見極めようとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中