最新記事

ウクライナ戦争

中国からあの米同盟国まで ロシアを支持・支援する国は世界人口の半分以上

THE WEST VS. THE REST

2022年5月10日(火)16時55分
アンジェラ・ステント(ブルッキングス研究所シニアフェロー)
インドのモディ首相、サウジアラビアのムハンマド皇太子、イスラエルのベネット首相

(左から)インドのモディ首相、サウジアラビアのムハンマド皇太子、イスラエルのベネット首相 FROM LEFT: LISI NIESNER-REUTERS, BAHRAIN NEWS AGENCY-REUTERS, MENAHEM KAHANA-POOL-REUTERS

<透けて見えるのは21世紀版「冷戦」の構図。ロシアのウクライナ侵攻を批判しない国、それぞれの思惑とは>

ウクライナ侵攻の決断に当たり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4つの大きな計算ミスを犯した。

ロシア軍の実戦能力を過大評価し、ウクライナ人の抵抗と反撃の意思を過小評価した。

ロシアを敵に回すのを恐れて西側諸国の足並みが乱れると踏んだのも、欧米主導の広範な(つまり金融・貿易だけでなくエネルギー分野も含む)経済制裁にアジアの国々が同調しないと想定したのも間違いだった。

だが正しかった計算もある。西側諸国を除く「その他の国々」がロシアを非難し、あるいは制裁に加わることはないという読みだ。

ロシアの侵攻初日に「西側」代表の米大統領ジョー・バイデンは、これでプーチンは国際社会の「嫌われ者」になると述べたが、世界の多くの国は今もプーチンを嫌っていない。

この10年で、ロシアは中東やアジア、中南米、アフリカ諸国に急接近した。1991年のソ連崩壊後に一度は撤退した地域だ。

また8年前のクリミア併合後は、とりわけ中国に擦り寄ってきた。西側諸国はロシアを孤立させたかったが、中国はロシアを支持し、シベリアと中国東北部を結ぶパイプラインでロシアから天然ガスを供給する契約も結んだ。

国連総会ではこれまで、ロシア非難決議とウクライナ人道支援決議、国連人権理事会からロシアを追放する決議が採択された。

だが棄権や反対票を投じた国々の人口を足すと、世界の総人口の半数を超える。

つまり、世界中がロシアの侵攻を不当と見なしているわけではない。ロシアを罰することを望んでいるわけでもない。

むしろ、この状況に乗じて利益を得ようとする国もある。そういう「その他の国々」は、プーチンのロシアとの関係を損ないたくない。だから今の戦争が終わった後も、西側諸国の頭痛の種となる。

「その他の国々」の代表格は、もちろん中国だ。ロシアが何をしようと中国は支持するという確信がなければ、プーチンもウクライナ侵攻に踏み切れなかったはずだ。

北京冬季五輪に合わせてプーチンは訪中し、2月4日に共同声明を発表していた。そこでは両国が「無限の」友好を維持し、西側の支配に対抗する姿勢が強調されていた。

中国の駐米大使は、習近平(シー・チンピン)国家主席がプーチンと会談した際にウクライナへの侵攻計画を知らされていたとの報道を否定しているが、真偽の程は誰にも、永遠に分からない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6

ワールド

アフリカなどの途上国、中期デフォルトリスクが上昇=

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 期末配

ビジネス

大和証Gの10-12月期、純利益は63.9%増の4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中