ロシア携帯通信網は破綻の恐れ ノキアなど撤退で「死にゆく技術の博物館」に
ロシアにとって、相次ぐ離脱は痛手だ。モスクワ・タイムズ紙は、北欧2社の離脱で「ロシア通信システムの供給と保守が宙吊りの状態」となっていたところ、ファーウェイの事業停止表明が「さらなる追い討ち」をかけたとみる。
これら3社からの機器の納入が途絶えたことで、既存4Gの通信エリアの改善も難しくなるだろう。モスクワ・タイムズ紙は欧州国際政治経済センターのホソク・リー=マキヤマ氏の見解をもとに、「ファーウェイ、ノキア、エリクソンなしでの拡張はほぼ不可能であり、既存のネット通信地域を広げる計画もこう着状態に陥ったとみられる」と報じている。
中国企業がシェア躍進
競合3社がすべて離脱したいま、制裁に同調していない中国ZTE社が急激にシェアを伸ばす可能性があるだろう。事実ファーウェイも、ノキアとエリクソンの離脱後に一時、シェアを急増させていた。
事業者向け機器ではなく個人向け携帯端末に関する販売データではあるが、3月初頭の2週間でファーウェイは売り上げを300%増加させている。技術解説誌のアーズ・テクニクカは、侵略によりウクライナもロシアも国として損失を被るなか、「ファーウェイはウクライナ戦争における初期の勝者であった」と述べている。
そのファーウェイも事業停止の意向を示したいま、ロシアでのシェア4位に甘んじてきたZTEにとっては、単独で巻き返しを図るチャンスだ。しかし、不健全な独り勝ちは市場のバランスを大きく損なうおそれがあり、長期的には国民に不利益をもたらす展開が予想される。
また、すべての機器をZTE製に置き換えることは費用面から現実的ではなく、同社への切り替えは難航しそうだ。ノキアとエリクソンは過去30年にわたり、クリミア半島を除くロシア全土に両社製の基地局を普及させてきた。
こうした事態を受け、ノキアは人道的見地からの支援が必要だとして、制裁下でもネットワーク機器の提要を続けられるよう正式な認可の申請に向けて動いている。
ただし、ノキアの本拠であるフィンランドもエリクソンが位置するスウェーデンも、対ロシアでの集団防衛を念頭に、北大西洋条約機構(NATO)への加盟に意欲をみせている。人道的救済措置とのあいだで、両社は難しい采配を迫られそうだ。