最新記事

ウクライナ

マリウポリの地下室で、8歳の少年が「絵日記」に書いた「ロシア侵攻」の悲痛

8-Year-Old's Diary Narrates Horrors Of Russian Invasion In Mariupol

2022年5月11日(水)11時07分
ミーラ・スレシュ
マリウポリの少年

@Evgeny Sosnovsky/Facebook

<少年は砲撃で大怪我を負い、日記には2匹の飼い犬と祖母が亡くなったことも書かれている。彼はまだマリウポリにいるという>

ロシアによる侵攻を受け、激戦が続くウクライナ南東部マリウポリ。この町に住む8歳の少年が書いた日記がSNSに投稿され、戦争の恐怖が無実の子供に与えるトラウマに改めて注目が集まっている。

少年は砲撃で彼の「肉が引き裂かれた」様子や、「2匹の飼い犬」と「ガリアおばあちゃん」が「愛するマリウポリ」とともに亡くなった悲痛を、文章と絵で日記に書いた。この日記の画面をSNSに投稿したのは写真家のエフゲニー・ソスノフスキーで、少年の親戚でもある。少年は安全上の懸念から身元は明らかにされていないが、今もマリウポリにいるという。

少年の日記には、文章とともに絵も描かれていた。そこには破壊された家々や、道に倒れた人たちの姿、炎上するビル、さらにはヘリコプターが飛ぶ下で戦車とともに銃を持った兵士たちが進軍する様子も描かれている。

一方、別のページには彼の誕生日をちゃんとお祝いすることを夢見る絵もある。テーブルに大きなケーキが置かれ、誕生日パーティーにたくさんのお客さんが集まっている様子だ。

アゾフスターリ製鉄所への攻撃の巻き添えを受けた家族

ソスノフスキーは戦争が始まって以来、少年の家族とともに過ごしてきたと語る。日記に書かれている少年の怪我については、ウクライナ側部隊が立てこもりロシア軍が包囲するアゾフスターリ製鉄所への攻撃によって負ったものだとした。

ソスノフスキーは「アゾフスターリに向けて撃たれた砲弾は私たちの真上を飛んで行ったが、いくつかは住宅にも落ちてきた。(少年の)祖母は、私たちの近所に住んでいた。彼女と少年は、本当に仲の良い友達同士だった。彼女が亡くなったのは自然死だったが、戦争によってそれが早められたことは疑いようもない」と、ラジオ・フリー・ヨーロッパのロシア語版ウェブサイトに語っている。

「そして、そう、犬たちもだ。1匹は砲撃の破片によって部屋の中で体を切断され、2匹目は後になってがれきの下で遺体を発見した」

3月17日にはアゾフスターリへの砲撃で、ソスノフスキーの姪とその2人の子供が怪我をしたという。2人の子供のうちの1人が、日記を書いた少年だった。「少年は背中と腕に大怪我を負い、少女は頭に切り傷を負った」と、ソスノフスキーは語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシア第1四半期GDP速報値、前年比+4.4%

ワールド

米連邦高裁、トランプ政権に司法との対立回避を呼びか

ビジネス

独企業、3割が今年の人員削減を予定=経済研究所調査

ビジネス

国内債券、超長期中心に3000億円増 利上げ1―2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中