日韓関係改善のため、韓国・尹錫悦大統領がすべき3つのこと
Toward Trilateral Trust
加えて、元徴用工訴訟問題が象徴した歴史をめぐる行き詰まりは近年、日本の対韓輸出規制を契機とする貿易問題や防衛問題(韓国は日韓秘密情報保護協定を破棄しようとした)に飛び火してきた。
日韓関係が悪循環に陥るなか、隣国に対する両国国民の意識はむしばまれている。
日本政府が2019年7月に韓国向けの輸出規制を強化した際には、韓国の消費者が日本製品の不買運動を開始。一方、韓国は信頼できない隣人で日本政府は正しい行動をしているとの見方が日本では一般的だった。
韓国のシンクタンク、東アジア研究院(EAI)と日本の言論NPOが20年に実施した共同世論調査では、日本に良くない印象を持っていると回答した韓国人の割合が71.6%に達した。それに対し、韓国に良くない印象を持つ日本人の割合は46.3%だった。
こうした状況が背景にあるなか、尹政権の行く手には厳しい道が待ち構えていそうだ。
それでも、日韓・日米韓の連携強化に向けた新たな取り組みとしては、少なくとも3つの手法が想定できる。
第1に、日韓関係の改善には民間に根差したボトムアップの路線が不可欠だ。根強い歴史問題はトップダウンでは解決できない。
1998年の日韓共同宣言の精神に立ち戻り、両国の社会が互いを信頼できるパートナーと認識できるよう各種の交流を再開することが極めて重要だ。国内政治を理由に、こうした交流が立ち消えになってはならない。
協力の戦略的枠組みを
第2に、外交戦略上の共通の立場を探ることが重要になる。
日本政府が掲げる外交政策「自由で開かれたインド太平洋」と「グローバル中枢国家」戦略が交わる点はあるか、尹政権は検証するべきだ。インド太平洋地域の安定促進のため、両国は協力課題を見定めなければならない。
第3に、尹政権は日米韓連携のさまざまな枠組みを考案する必要がある。
いい手本が、北朝鮮の核開発問題を受けて99年に設置された日米韓調整会合(TCOG)だ。高度に制度化されてはいなかったが、TCOGは日米韓の協調慣行を醸成する戦略的プラットフォームとして機能していた。
差し迫った軍事的脅威を解消し、北朝鮮の非核化に向けた道筋を整える上で、日米韓の連携を優先課題にするべきなのは確かだ。
とはいえ、新興技術やサプライチェーンのレジリエンス(回復力)、気候変動危機といった新たな課題への持続的対応を可能にする協力プラットフォームの形成も、同じくらい重要になる。
韓国の新政権には、戦略的な視点が求められている。
From thediplomat.com