最新記事

アメリカ

現在アメリカで大麻合法は18州+特別区、違法州にも広がる「大麻成分入り」キャンディ&グミの危険性

2022年5月19日(木)16時40分
長野弘子(在シアトル)
「大麻成分入り」キャンディ

ニューヨークの展示会で展示される「大麻成分入り」キャンディ Mike Segar- REUTERS

<2012年以降、娯楽目的の大麻がどんどん合法化されているアメリカ。専門店でしか買えないはずだが、通常の小売店で、大麻成分入りのキャンディやグミを買った子供が病院に担ぎ込まれるケースが急増している>

アメリカの街を歩いていると、たまに何かが焦げたような独特の匂いが漂ってくることがある。この匂いの正体は、マリフアナ(大麻)だ。日本では考えられないが、アメリカでは公園やスーパーの駐車場、イベント会場など、ありとあらゆる身近な場所でこの匂いに遭遇する。

1996年にカリフォルニア州で初めて医療用大麻が合法化されて以来、アラスカ州、オレゴン州、ワシントン州などを筆頭に次々とほかの州も医療用大麻の解禁に踏み切った。

その16年後の2012年11月には、ワシントン州とコロラド州が娯楽目的での嗜好用大麻を全米で初めて合法化した。筆者はワシントン州のシアトル在住なので、解禁された当時、アメリカ人の友人たちが「大麻が合法になるなんて、まるで夢みたいだ!」と狂喜していたのを今でも覚えている。

この2州を皮切りに、嗜好用大麻を解禁する州も増えていく。現在、医療用・娯楽用ともに合法的に大麻が販売されている州は:
・アラスカ州
・アリゾナ州
・カリフォルニア州
・コロラド州
・コネチカット州
・イリノイ州
・メイン州
・マサチューセッツ州
・ミシガン州
・モンタナ州
・ネバダ州
・ニュージャージー州
・ニューメキシコ州
・ニューヨーク州
・オレゴン州
・バーモント州
・バージニア州
・ワシントン州
――の18州、およびコロンビア特別区(首都ワシントン)である。

州によって規定が違うが、21歳以上であれば「ディスペンサリー」と呼ばれる大麻販売店で大麻を合法的に購入でき、所持したり使用しても罪に問われない。州によっては、個人での栽培も許可されている。

なお、大麻を吸うことは公共の場では許されておらず、自宅やプライベートな空間でのみ合法である。

鳴り物入りで解禁された大麻ビジネス、その市場は急成長を遂げている。マリフアナ・ビジネス・ファクトブックの最新の統計によると、合法大麻の小売総額は2022年には330億ドルを超え、さらに2026年までには520億ドルを超えると推計されている。

大麻関連産業の経済効果の総額は2026年には1580億ドルに近づくとされ、日本円にすると20兆円を超える凄まじい数字になる。

きっかけは2018年、産業用大麻の栽培が全米で合法化

しかし、沸き立つ活況の影で、子供の安全性をおびやかすニュースが後を絶たない。

大麻成分の入ったキャンディやグミが近所のコンビニなどで販売され、それと知らずに誤って食べた子供が救急病院に担ぎ込まれるケースが急増しているのだ。なかには、それにより命を落としたとされるケースも報告されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中