現在アメリカで大麻合法は18州+特別区、違法州にも広がる「大麻成分入り」キャンディ&グミの危険性
アメリカ中毒相談センター協会(AAPCC)の調査によると、12歳未満の子供が家庭で大麻成分入りのキャンディやグミを誤って食べたケースは、2016年の132件から、2020年には2500件に急増した。
大麻の販売は専門店のディスペンサリーで行われ、通常の小売店では販売できないことになっているにもかかわらず、なぜこのようなことが起きているのだろうか。
その謎を解くには、大麻の有効成分について知る必要がある。
大麻の有効成分はカンナビノイドと呼ばれるが、その中でもテトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)という2つの成分が特に市場で出回っている。ドラッグとして「ハイ」になる精神活性成分はTHCであり、CBDでは酩酊状態にはならない。
THCにもさまざまな種類があるが、いわゆる法律で規制されているTHCは大麻そのものから抽出される「デルタ9」であり、もうひとつの大麻の有効成分であるCBDから合成される「デルタ8」と呼ばれるTHCに関しては、明確な法規制のない州が多い。
問題は、デルタ8もまた、デルタ9と類似した精神活性作用がある点だ。したがって、法律でデルタ8を明確に禁止していない州では、法の抜け穴が悪用され、コンビニでデルタ8入りのグミやキャンディが堂々と販売されている場合がある。
現在、デルタ8の販売を禁止もしくは規制している州は、ニューヨーク州、コロラド州、ワシントン州、アラスカ州、アリゾナ州などを含む18州のみである。
デルタ8が普及したきっかけは、2018年に遡る。この年、米国で新たな農業法「2018年農業法」が成立し、産業用大麻と呼ばれる「ヘンプ」の栽培・抽出が全米で合法化された。
ヘンプは「デルタ9 THCの濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下のもの」、マリフアナは「デルタ9 THCの濃度が0.3%を超えるもの」と定義されており、ヘンプとマリフアナは法的に明確に区別されている。
全米で合法的に栽培が可能になった「ヘンプ」からCBDを抽出し、そこからデルタ8を大量に合成すれば、法律でデルタ9を禁止している州――つまり、嗜好用大麻が合法でない州――でも、日本で言う脱法ハーブのような形で販売できるというわけだ。
観光客で一年中にぎわうフロリダ州でも、このデルタ8入りキャンディが大きな問題となっている。