反プーチン派に残ったのは絶望と恐怖と無力感...ロシア国民の本音とは【現地報告】
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「人命より大切なものはない」。そう自身のインスタグラムに書き込んだのは、ギフト・オブ・ライフの創設者で人気女優のチュルパン・ハマートワだ。
「私たちの基金は15年間、このスローガンで子供たちを救ってきた。7万人の病気の子を助けてきた。......でも今は隣の兄弟国で、子供も大人も、病気ではなく爆発で死んでいる。胸が痛む。こんな戦争はやめてほしい」
ハマートワはロシア人に愛されている本物のスターで、誠実な人だ。政府による反体制活動家の迫害にも抗議してきた。そんな彼女も、3人の娘を連れてラトビアへ逃れた。今はロシアに「帰るのが怖い」と言う。
ロシアの反政府派は厳しい状況に置かれている。プーチン批判の急先鋒で、要人たちの汚職を告発してきたアレクセイ・ナワリヌイ(45)は刑務所に閉じ込められている。ナワリヌイは2020年に毒殺されかけたが、なんとか命を取りとめ、21年にドイツから帰国したところで逮捕され、収監されてしまった。
検察当局は先日、ナワリヌイを詐欺と法廷侮辱罪で9年間、さらに過酷な重罪犯用刑務所へ送るよう求めた。ナワリヌイは囚人服姿で法廷に立ち、こう言い放った。「全ての人を刑務所に閉じ込めることはできない。たとえ113年の刑を宣告されても、私たちは恐れない」と。
反政府派に残ったのは絶望と恐怖と無力感
きっと世界中が、ロシアの反政府派に期待していただろう。だが彼らは沈黙を強いられ、残ったのは絶望と恐怖、そして無力感だ。
「ロシアにいても、近い将来に明るい見通しはない。まともで賢い人間はこの国を出たほうがいい」。サンクトペテルブルクに住む元医師のオルガ・ウラジミーロフナは本誌にそう語った。「私たちはソ連時代にあまりに多くの弾圧を受け、多くの反体制派の投獄を見てきた。でも今後は、もっとひどくなりそうだ」
ロシアでは表面上、一般人の生活は劇的には変化していない。モスクワの劇場は満席で、かなり高額なボリショイ劇場のバレエ『白鳥の湖』の週末の公演のチケットも売り切れた。3月23日も、街の交通渋滞はいつものようにひどかった。
だが、ロシアの人々は今の自分たちの生活を、火が出て崖から落ちていきそうな列車の食堂車で食事をしている状態に例えている。
プーチンの盟友であるゲンナジー・ティムチェンコ、ガス企業ノバテクの経営者レオニード・ミケルソン、政商ワギト・アレクペロフなど、ロシアの富豪たちはロシア軍のウクライナ侵攻以来、それぞれ数十億ドルの損失を被った。